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遺言書を作成した後は、相続が開始されるまで大事に遺言書を保管していなければなりません。保管方法は作成した遺言書の種類に応じて異なり、保管方法によって相続開始までのリスクの大きさも変わってきます。
具体的にどのようなリスクが生じるのでしょうか。ここでどの問題点を挙げるとともに、リスクをなくすための保管方法などを紹介していきます。
遺言書作成後のリスクとは
遺言書は、遺産の行方を左右する書面であり、これが作成されているかどうかは相続人等の経済状況にも大きな影響を与える可能性があります。
そのため、遺言書をせっかく作成してもきちんと保管がされておらず遺言書を紛失してしまうと、遺言者が望む通りに財産を渡すことはできなくなってしまいます。
また、相続人でない者に関しては遺言書を使った遺贈がされなければ遺産を受け取る権利を得られません。
そのため遺贈を指定した遺言書がなくなってしまうと遺産に対する一切の権利を失ってしまいます。
作成後の遺言書に関して起こるリスクはこれだけではありません。何者かによって改ざんをされてしまう可能性もあります。
遺言書の記載に従うと、本来受け取れるはずの法定相続分より小さい額でしか財産が受け取れない方も出てきます。ある相続人の取る分が減ることにより、当該相続人からの債権回収を狙っている債権者も満足に請求ができなくなる可能性があります。
このような利害関係を持つ者が、中身を書き換えてしまったりわざと消失させてしまったりするリスクもあるのです。
そのため遺言者は誰でも手に取れるような場所に作成した遺言書を保管するのではなく、金庫など厳重に管理された場所に置いておくよう工夫する必要があります。
遺言書の保管方法
代表的な、よくある遺言書の保管方法とそれぞれの特徴を紹介していきます。
【自宅での保管】
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者自らが遺言書を保管しなければなりません。多くの遺言書は自筆証書遺言として作成されていますし、「自宅で保管をする」という方が多いのではないでしょうか。
この場合、内容の修正がしたいときもすぐに対応できます。保管に費用がかからないのもメリットです。
他方で、紛失や改ざんなどのリスクにさらされるというデメリットがあります。
特に親族間の仲が良くない場合や、遺言書の存在とその中身が家族に知られている場合には要注意です。
【信頼できる人物に預ける】
自分以外の、誰か信頼できる人物に遺言書を預けることも可能です。
家族や友人などであれば保管費用もかけずに保管してもらえるかと思われます。
この場合、預けた人物が約束に従い適切に保管をしてくれる場合には多くの問題を防ぐことができるでしょう。何者かに改ざんされたりなくされたりするリスクも減らせます。
ただ、その預けた人物が改ざんなどをしてしまう可能性もゼロではないため、完全にリスクをなくせるとまではいえません。
その一方で、弁護士などの専門家に預けることでこういったリスクを最小限にとどめることは可能です。専門家に依頼することになるため費用はかかりますが、専門家自身が遺言書の内容に直接利害関係を持つわけではありませんし、通常、紛失・改ざんなどの心配をする必要はありません。
また、遺言書作成から相談ができるなどのメリットも得られます。
【公証役場での保管】
公正証書遺言の場合、保管に関して遺言者が悩む必要はありません。公証人が作成をした“公文書”として公証役場に原本が保管されるためです。
この場合も費用がかかるなどのデメリットはありますが、原本の紛失や改ざんの問題を限りなくゼロにすることができるというメリットがあります。
相続開始後の「検認」と呼ばれる手続も必要ありません。
自筆証書遺言などでは、まず遺言書を家庭裁判所に持っていき、検認手続として現在の状態を確認する作業をしなければなりません。
相続開始後の忙しい中、この手続の対応をしなければならないのです。公証役場で保管してもらっていた場合にはこれが不要となります。
【法務局での保管】
自筆証書遺言でも安全に保管をしてもらうための制度が近年設けられました。
この「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、所定の手続を行うことで、法務局で遺言書を保管してもらうことができます。
やはり手数料がかかるという面がデメリットにはなりますが、公正証書として作成しなかった場合でも公正証書遺言同等の水準で保管をしてもらえるという利点があります。
また、同制度による保管の場合でも、相続開始後の検認手続は不要となります。
法務局で保管してもらうための手続の流れ
最後に、自筆証書遺言保管制度により法務局で遺言書を保管してもらうための手続について簡単に紹介しておきます。
基本的な流れは次の通りです。
①遺言書を作成する
②保管をしてもらう場所を決める
※遺言者の住所地や本籍地、所有している不動産の所在地を管轄とする遺言書保管所から選ぶことができる
③保管申請書を作成する
④遺言書保管書で予約をする
※事前予約が必要
⑤遺言書保管書にて保管申請を行う
※添付書類として住民票の写し、顔写真付きの身分証明書などが求められる
※手数料も1通あたり3,900円が必要
⑥遺言書の提出と保管証を受け取る
※保管を依頼した遺言書を特定するために必要な番号が記された保管証が発行される
※保管証は再発行ができないため要注意
同制度により保管してもらう場合でも、遺言書の有効性までが担保されるわけではありません。そのため遺言書作成を適切に行うことに対する重要性は変わりありません。専門家にチェックしてもらいつつ、慎重に遺言書を作成する必要があります。
遺産分割協議を進めるにあたっては、相続財産の把握ができていなければなりません。そこで相続開始後は、相続人らは財産の調査を行うことになります。ここではその調査方法や調査にかかる費用について解説をしていきます。
相続財産の調査方法について
相続財産としてよくあるもの、価額の大きなものを例に挙げて、それぞれの調査方法を簡単に説明していきます。
【預貯金の調査】
預貯金に関しては、被相続人が口座を開設していた金融機関の特定から始める必要があります。そこでまずは被相続人の自宅を調べてみましょう。通帳があればそこから金融機関の特定が可能です。その他郵便物に書類が届いていることもあります。
ネット銀行を利用して通帳がないケースもありますので、可能ならメールなども確認します。
金融機関の特定後は、残高証明書の発行を請求します。残高証明書を確認できればいくら預貯金があるのかがわかります。
【不動産の調査】
不動産は他の財産に比べて価額が大きい傾向にあるため、特に調査の必要性が高い財産と言えます。
宅地や家屋、投資用の建物など、被相続人が住まいとして使っていた自宅以外にも探してみましょう。
不動産は、固定資産税の納税通知書や登記識別情報通知書を確認することで調査できます。通知書には保有している不動産の番号等が記載されているため、その番号を頼りに法務局にて登記簿謄本を取得しておくと良いです。
あるいは、市区町村役場で固定資産課税台帳を取得することで調べることもできます。
【有価証券の調査】
国債や株式など、有価証券に分類される財産が残っているケースもあります。こちらもまずは自宅を調べ、取引のある金融機関等からの書類がないか、チェックしていきます。
証券や残高通知書などが手掛かりとなります。
保有しているのが上場株式である場合、「証券保管振替機構」に開示請求をすることで、口座を開設している機関がスムーズに把握できます。
【債務の調査】
借金など、マイナスの価値を持つ財産に関しても必ず調査します。
大きな資産があっても、それと同等以上の負債がある場合には相続放棄も検討する必要があるからです。相続放棄は、相続があったことを知ってから3ヶ月以内に行う必要があり、相続放棄など何らの手続も行わず単純承認してしまうと、負債もそのまま相続人が負担しないといけなくなります。
そのためできるだけ早期に財産調査を行い、相続放棄をすべきかどうかの判断ができる状態にしておく必要があるのです。
借金の存在が疑われる場合、自宅を捜索して請求書が届いていないかどうか、督促状が届いていないかどうかをチェックします。
不動産の登記も要チェックです。大きなローンを組むような場面では、不動産が担保に入れるケースがありますので、その形跡が登記から確認できれば借金の存在が確認できるかもしれません。
不安がある場合には「日本信用情報機構」「CIC」「全国銀行協会」などの機関に開示手続きを行うと良いです。
なお、債務が確認され、債権者から請求を受けたとしても弁済に応じてはいけません。被相続人の財産を勝手に処分してしまうと、単純承認したことになってしまいます。
相続財産の調査時にチェックすべきポイント
相続財産の調査の基本は、被相続人の自宅の捜索です。預金通帳などから、取引のあった機関などを特定することができます。
また、価値の財産、例えば貴金属や腕時計などが見つかることもあります。
特に「タンス預金」には要注意です。口座から下ろし、タンスなど自宅のどこかに隠してある現金があるかもしれません。意図的にわかりにくい場所に隠されていることもありますので、家中隅々まで調べるようにしましょう。
生命保険の契約をしていなかったかどうかも要チェックです。
やはり自宅の捜索から始め、保険会社からのお知らせの書面や生命保険証券がないか、探しましょう。生命保険金の受け取りが可能な場合、相続税の計算に一定額を含めなければなりません。
相続財産の調査にかかる費用
相続財産の調査をする場合、それが自宅の捜索であれば費用はかかりません。
しかし各取引先等に請求を行うこともあり、手続に応じた費用が発生することもあります。
例えば預貯金の調査では、金融機関に対して残高証明書の発行を依頼することになります。
そしてこのとき、数百円ないし1,000円ほどの手数料が必要になります。その他、請求時に提出が必要な戸籍謄本の取得に数百円がかかります。
不動産を調査するため固定資産課税台帳を取得する場合は、無償で済むケースもあります。有償のケースもありますが、こちらも数百円ほどで十分です。
登記簿謄本の取得にあたっては、1通あたり600円が必要です。
有価証券の長さにあたり証券保管振替機構に開示請求を行うのなら、1件あたり6,050円費用がかかります。口座名義人だともう少し安くて済むのですが、相続人など、本人以外の人物が請求をするには少し高額の手数料を負担しなければなりません。
相続財産の調査にあたって、様々な機関に対して情報の開示を求めるなど、多くの手続をこなしていく必要があります。調査に漏れがあると後々深刻なトラブルに発展する危険もあることから、一般的には相続人が直接行うのではなく弁護士などの専門家に任せて調査は進められます。
このとき、専門家の依頼にかかる費用も発生します。財産状況が複雑で仕事量が多くなるほど費用も大きくなる傾向にあります。費用の額は依頼先によって異なりますので、まずは相談をしてみると良いでしょう。
「公正証書遺言」とは遺言書の1種です。自分だけで作成できる「自筆証書遺言」とは異なり、公証役場で作成手続を進めなければなりませんし、手間や費用もかかります。
しかし公正証書遺言ならではの良さもあります。具体的にどのようなことができるのか、遺言書が一般的に有する効力も含め、公正証書遺言の効力についてここで解説していきます。
公正証書遺言の効力について
公正証書遺言には、公正証書であることに由来する効力や、遺言書一般に共通する効力などがあります。それらを以下にまとめました。
【私文書より高い証拠力を持つ】
遺言は、権利義務関係を生む、私人間の法律行為です。
契約を交わすとき同様、書面(私文書)を作成することで、取り決めた内容を客観的に示すことができるようになります。
しかし、書面があれば常にその内容が真実であるとみなされるわけではありません。
書面に記載されている内容が正確であるかどうかは別の問題ですし、信頼性を欠く書面であると評価されると証拠として十分に効力を発揮しません。
一方で、公正証書の場合には公証人と呼ばれる法律のプロが作成する書面(公文書)です。
私人間の法律行為についての陳述を受け、公証人が書面に記載をしていくことになります。そのため私文書と比べると高い証拠力を持つと評価できます。
遺言書の場合特にこの点が大きな意味を持ちます。
遺言書が効力を発揮するのは遺言者が亡くなってからですので、「本当に本人が作成した文書なのか」「作成時点で本人に遺言能力(十分な理解力等のこと)があったのか」の確認を直接行うことはできません。
これらにつき相続人等が争うことになれば、せっかく作成した遺言書も意味をなさなくなるおそれが出てきます。
そこで公文書として作成される公正証書遺言が役に立つのです。
公正証書遺言では、作成にあたり公証人が本人確認も行いますし、遺言能力の有無に関しても確認がなされます。遺言書に記載する事項につき意味を理解できているかどうか、これらもチェックされます。
こういった理由などから、私文書に比べて公正証書遺言には高い証拠力が認められているのです。
特に、相続をめぐって争いが起こりそうな場合には、これを防止するために公正証書遺言を作成しておくと良いでしょう。
【相続財産に関する指定ができる】
公正証書遺言も自筆証書遺言同様、相続財産に関する指定をすることができます。
何ら指定をしなくても、法律上規定されている法定相続分に従った遺産の分配、あるいは共同相続人間の協議を通して好きに分配していくことは可能です。
しかし遺言書に「相続分の指定」をすることで、各相続人の取得分につき一定の縛りを課すこともできます。
共同相続人全員の意見が揃えば遺言書の内容に従わない遺産分割も可能ですが、そうでない場合には遺言書の内容に拘束されますので、大きな効力を持つこととなります。
また、「遺産分割の禁止」を強制することも遺言書により可能です。
相続開始から5年を超えない期間に限られますが、その間に限り遺産分割を禁止できます。
例えば相続開始直後の協議だと揉める可能性が高いと想定される場合などに、相続人らが冷静になるための期間として一定期間遺産分割を禁止するとのルールを設けるケースがあります。
【相続権に関する指定ができる】
遺言書への記載により、相続権に関する効力を生じさせることも可能です。
例えば「相続人の廃除」「子の認知」などを遺言書を使って行うことができます。
相続人の廃除とは、本来相続人となるはずの人物につき相続権を剥奪することを意味します。過去に当該人物から虐待を受けていたり著しい非行をはたらいていたり、特別な事情がある場合には遺言者が廃除をすることが認められています。
認知をした場合には、婚姻外(結婚していない状態)で生まれた子に対しても相続権が与えられます。いわゆる“隠し子”に対して遺産を渡してあげたいと考える場合には、遺言書を使って認知をすることが有効です。
【遺言執行者や後見人等の指定ができる】
相続人が多く財産関係も複雑であるなど、相続手続が大変と考えられる場合には「遺言執行者」を指定することがあります。
報酬も発生しますが、遺言書に記載した内容の実現を職務とする遺言執行者がいれば、相続人らの負担を軽減することができます。
またこれとは別に、後見人等の指定を遺言書で行うことも可能です。
例えば未成年の子がいる場合、親権者がいなくなることによるリスクを避けるため、第三者を「未成年後見人」として指定することがあります。信頼できる人物にお願いをし、子の財産管理等を委ねるのです。
未成年後見人に指定できるのは親族に限られません。弁護士など、後見制度に精通している専門家に依頼することも可能です。
【遺留分侵害額請求を妨げることはできない】
遺言書をもってしても、遺留分制度に背くことはできません。
家族等の生活保障などの観点から日本では遺留分制度が設けられています。最低限の財産については、一定の相続人には確保する権利が認められていて、それを侵害する形で遺言書が作成されていたとしても「遺留分侵害額請求」を行うことにより財産を回収することができるようになっているのです。
これは公正証書遺言であっても同じです。
「公文書として作成した遺言書だから遺留分の影響を受けない」ということもありません。
そこで公正証書遺言であろうと、後々トラブルが起こらないよう遺留分にも配慮した遺産分割の指定を行うことが大切です。
【検認手続が不要になる】
自筆証書遺言の場合、相続開始後、遺言書は家庭裁判所に持っていき「検認手続」を行わなければなりません。その時点における遺言書の内容を保全し、改ざん等のリスクを排除するために行われます。
これに対し公正証書遺言では検認手続は不要です。
公証役場で原本が保管されていますので、そもそも改ざん等のリスクもありませんし、紛失も起こらないからです。
【公正証書遺言の効力に有効期限はない】
公正証書遺言を使えば上記のような効力を発揮することができます。
有効期限もありません。時効のようなルールは適用されないため、いったん有効に作成された遺言書は破棄・変更をしない限り有効なままです。
なお、保管に関しては期間の概念があります。
公正証書一般に対して、次の規定が適用されます。
第二十七条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。
一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年
:
3 第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。
(引用:e-Gov法令検索 公証人法施行規則第27条 第1項第1号・第3項 )
公証人法施行規則第27条第1項第1号の規定に従えば20年間が保管期間ということになるのですが、同条第3項によれば“特別の事由”があればその間保存をするとあります。
公正証書遺言の保管はこの“特別の事由”にあたると解釈されており、20年に限定されず、公証役場が半永久的あるいは遺言者の生後120年までの間保存をしてくれます。
公正証書遺言が無効になるケース
公正証書遺言を作成したとしても、これが無効になってしまうケースがあります。
例えば「遺言者に遺言能力がなかった」「公正証書遺言の作成にあたり口授を欠いていた」「遺言内容が公序良俗に反していた」「証人が未成年者・推定相続人・受贈者であるなど不適格者であった」「遺言書の作成が詐欺や強迫に基づいていた」といったケースなどです。
公証人が作成に関与するためこういった問題が起こる可能性は低いと考えられますが、万が一これらに該当したときには無効になり得ることは理解しておきましょう。
未成年の子がいる夫婦が離婚をする場合、「親権者」をどちらかに定めなければなりません。そしてその親権者が子どもと一緒に暮らすこととなりますので、親権者ではない親は子どもと別で暮らすこととなります。
しかし子どもの利益を考え、別居している親とも会う権利が認められています。この「面会交流権」は夫婦間で話し合ってその具体的内容を定めることになるのですが、親権者のように、面会交流権は離婚時に定めるべき必須事項とはされていません。
そこでここでは、面会交流権はいつ決定すべきなのか、またその決定にあたっての注意点なども解説していきます。
面会交流権とは
面会交流権は、別居している子どもが親と面会をする権利のことです。
基本的には当事者である夫婦間で話し合い、ある程度自由に面会の方法や頻度などを定めることができます。
親権者の定めのように厳格なルールには縛られておらず、例えば一緒に旅行をする形で面会交流をすることなども当事者間で異議がなければ問題とはされません。
面会交流権の決定時期
面会交流の方法等を定める場合、“その協議をいつ行うのか”ということも問題になります。
【決定すべき時期に決まりはない】
親権者については離婚時に必ず定める必要があります。
しかし、面会交流の内容を離婚時に定めなければならないとするルールはなく、面会交流について定めないまま離婚を成立させることもできます。
実際、面会交流に関する条件を定めることなく離婚をしている例も少なくないと言われています。
離婚そのものに対しては協議書を作成していたとしても、その協議書に面会交流に関する条項が設けられていないということもあります。
しかしながら面会交流の条件を定めなかったからといって面会交流権が認められなくなるわけではありません。いつでも必要に応じて両親が話し合って面会交流を実施することは可能ですし、後からその協議を行うことも可能です。
【ベストは離婚時に定めること】
離婚時に話し合っていなくても面会交流権が剥奪されるわけではありませんが、できるだけ離婚時に定めておくことが望ましいです。
元夫婦間の関係性が悪くなっているときほど離婚時にしっかりと話し合っておく必要があります。
そうしておかなければ、子どもと会いたくなってもスムーズに話し合いが進められず、面会交流がなかなかできないという事態に陥りかねません。
面会交流の内容を定める際の注意点
面会交流についての話し合いを進めるにあたっては、事前に以下の内容に留意しておくことが大切です。
【なかなか面会交流の内容が決まらないことがある】
両親が感情的にならず、冷静に話し合える状態ならすぐに協議を終えられることでしょう。
しかし一方または双方が感情的になっている、強く拒絶反応を示しているといった場合にはなかなか話し合いが進まず面会交流の条件等も決められません。
このときにはまず、家庭裁判所に調停の申立てを行うことになります。
調停委員が間に入り話を進めてくれ、互いに直接顔を合わせる必要がなくなります。そのため感情的にならずに落ち着いて協議が進められ、また、法律のプロの意見も反映させつつ面会交流の内容を定めていくことができるようになります。
しかし調停でも一方が同意をしなければ決着を付けられません。
そこで最終的には家庭裁判所による面会交流に関する審判を受けることになります。
調停が不成立になることでそのまま審判手続へと移行し、ここからは裁判官が当事者の主張などを聞き、妥当な面会交流の方法を定めていきます。
必ず結論を出すことができますが、思い通りの結果にならないこともあります。
【面会交流権が制限されることがある】
面会交流権が制限されることもあります。
特に子どもに対して虐待をしていたときには面会ができなくなる可能性が高くなります。
他にも、子ども自身が面会交流を拒否していると面会できなくなる可能性があります。ただし子どもが幼いときには拒絶をしていてもそれだけの理由では面会交流権は制限されにくく、逆にしっかりと自らの意思表示ができる年齢であると評価される場合には面会ができなくなる可能性が高くなります。子ども本人の意思能力等によりますが、傾向としては15歳以上になると本人の意思で拒絶ができるようになると言えます。
【重要事項は漏れなく定める】
面会交流の内容の定め方に決まりがなく自由である反面、当事者間で決めるべき事項をしっかり見定めて協議を進めていく必要があります。
例えば「面会の回数・頻度」「面会の時間」「子どもの受け渡し方法」「連絡の方法」「面会を断ることができるケース」などが挙げられます。子どもの年齢や互いの生活状況によっても適切な定め方は変わってきますので、弁護士に相談してトラブルのないよう面会交流についての協議を行うようにしましょう。
遺産の中には、借金などマイナスの価値を持つ財産が含まれていることがあります。そのため相続にあたってはプラスの財産のみならずマイナスの財産にも着目して、相続をするのかどうかの判断をしていくことが大切です。相続をしたくないのであれば「相続放棄」の手続を執らなければならないのですが、借金がある場合には注意すべきことがいくつかあります。
そこでこの記事では借金があるときの相続について、特に相続放棄に関わる手続などを解説していきます。
相続財産に借金があるとどうなるのか
遺産には様々な種類の財産が含まれます。現金や預貯金、自動車、不動産、有価証券などがあり、それぞれ承継するにあたって必要な手続が異なります。借金についても同様です。経済的にはマイナスの価値を持つものですが、被相続人が借金をしていた場合には相続人は借金を返す義務も引き継ぐことになってしまいます。
そこでプラスの財産とマイナスの財産とのバランスを考慮し、相続放棄の検討を行います。
何ら手続を行わなければ「単純承認」となり、被相続人が有していた権利や義務をそのまま相続人らが承継することになります。つまり、借金がある場合には残債務のすべてを弁済する義務を負わなくてはなりません。
単純承認せず、相続放棄もせず、「限定承認」を行うというやり方もあります。簡単に説明すると、プラスとマイナスの財産を差し引きして、プラスの財産が残ったときにその分のみを承継するといった承認方法になります。相続権を残しつつリスクを小さくできるというメリットが得られますが、手続が複雑であることやすべての相続人らで一緒に限定承認をしなければならないなどのハードルがあります。そこで限定承認はあまり利用されていないという実態があり、ここでは相続放棄に絞って言及をしていきます。
相続放棄の手順
相続放棄をするまでの流れを説明していきます。相続放棄の手続そのものはすぐに終わりますが、下準備等に多くの時間・労力を要します。
【相続財産の調査】
相続放棄をしてしまうと、一切の相続人としての権利を失うことになります。借金があるという事実のみをもって相続放棄の決断をしてしまうことのないよう留意しなければなりません。たとえ借金があったとしても、借金の額が小さく、それ以上の価値を持つ遺産がある場合には特段大きな問題とならないこともあります。
そこでまずは相続財産の調査を行いましょう。
借金の確認をするには、被相続人の口座情報をチェックしたり自宅に金銭消費貸借証書などの書類がないか確認したりすると良いです。借金の債務者であるかどうかということに加え、誰かの借金に関する保証人になっていないかどうかの確認も大事です。また、本人が亡くなってからしばらく期間が空いている場合には督促状が届いている可能性もあります。新たに届いた郵便物がないかもチェックすると良いでしょう。
【必要書類の準備】
相続財産の調査の結果、相続放棄を行うことの決断をしたのであれば、必要書類の準備を進めていきましょう。
相続放棄を行うには、相続放棄申述書と戸籍に関する書類を準備する必要があります。
相続放棄申述書に関しては家庭裁判所で入手が可能です。相続放棄をする理由などを記載していきます。
戸籍に関する書類としては、被相続人の戸籍附票または住民票除票、相続放棄する人自身の戸籍謄本が必要です。被相続人の戸籍謄本については、出生から死亡まですべてを集めておきましょう。
【相続放棄の申述手続】
上記書類の提出と手数料の支払いを行い、相続放棄の申述手続を進めます。
手数料として必要なのは収入印紙800円分と郵便切手代のみですので、大きな費用はかかりません。
なお相続放棄の申述手続ができるのは、“自身に相続開始があったことを知ってから3ヶ月”以内に限られます。
そのため「債権者から請求を受けることになればそのときに相続放棄をしよう」などと安易に考えてはいけません。相続の事実を知ったのであれば3ヶ月以内に調査や書類準備なども済ませて家庭裁判所で相続放棄の申述を行う必要があります。
相続放棄後の債権者への対応
相続放棄の申述を行い、家庭裁判所に受理がなされると、「相続放棄申述受理通知書」を受け取ることができます。これにより相続放棄をしたことの証明ができるようになります。
しかしこの通知書が全債権者に自動的に送られるわけではありません。債権者は特定の相続人につき相続放棄をしたのかどうかを知りませんし、単純承認となるのが基本ですので、相続をしたものと考え請求をしてくる可能性があります。
そこで相続放棄申述受理通知書をもって相続放棄をした旨債権者に伝えましょう。請求を受けてから対応するのではなく、相続人側から早めに伝えてあげると良いです。
手続中の財産管理に注意
相続放棄の検討中から相続放棄の申述が受理されるまで、そして受理後に至るまで、一貫して相続財産の管理には注意が必要です。
勝手に被相続人の現金や預貯金などを使ってしまうと単純承認をしたものとして扱われる可能性があります。家具の処分や契約の解約などにも要注意です。
さらに、借金の返済やその他未払いになっている家賃や医療費などへの返済も勝手に行わないよう注意しましょう。支払いを行うのではなく、現状を伝えて保留としてもらうよう求めると良いです。
財産の扱いには困ることもあるかと思いますので、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
遺言書は、公正証書として作成をすることで形式上の不備や紛失・改ざんのリスクを小さくすることができます。ただ、公証役場で予約を取り公証人とともに作成することになりますので、費用の支払いや事前の書類準備も求められます。ここではその費用と必要書類について説明します。
公正証書遺言作成にかかる費用
公正証書遺言を作成するにあたり、以下3点の費用がかかると考えておきましょう。
①公証人手数料
②必要書類の取得費用
③弁護士費用
公証人手数料と必要書類の取得費用については必須です。弁護士費用に関しては、遺言書作成に関する相談や事務手続き代行等の依頼をしたときに必要になるものです。そのため必須ではありませんが、法的な知識を備えていない人は弁護士への相談等にかかる費用も考慮して費用を準備しておくと良いでしょう。
【公証人手数料の額】
公正証書遺言は、遺言者がその遺言内容を公証人に口頭で説明し、公証人がその通りに記すことで作成されます。公証人は法律の専門家であり、公正証書遺言の作成過程において重要な役割を担う存在です。そこで「公証人手数料」の納付が必要になります。
手数料の額については、公証人手数料令にて「遺言の目的財産の価額」に対応して変動すると法定されています。目的の価額と手数料の対応表を以下に示します。
目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円
3億円以下 43,000円+(目的価額が5,000万円を超過するごとに13,000円の加算)
10億円以下 95,000円+(目的価額が5,000万円を超過するごとに11,000円の加算)
10億円超 249,000円+(目的価額が5,000万円を超過するごとに8,000円の加算)
具体的な額を把握するには、以下の手順に沿って計算を進めていきます。
①財産相続または受遺者ごとの取得価額を算出して、価額に対応する手数料(上表参照)を合算
②全体の価額が1億円以下である場合、11,000円を加算(遺言加算という)
③遺言書の原本・正本・謄本の枚数に応じた謄本手数料を加算
原本:原則として4枚を超えた分につき1枚あたり250円
正本、謄本:1枚あたり250円
④公証人に出張してもらう場合、手数料を50%加算(遺言加算、謄本手数料を除いた額の50%を加算)し、公証人に対する日当と交通費分も加算
【必要書類の取得費用の額】
後述するように、公正証書遺言の作成にあたり必要書類を集めなくてはならず、各種書類を取得するのに若干の費用がかかります。
例えば戸籍謄本の取得に1通あたり450円、住民票などの取得には1通あたり300円ほどがかかります。いずれも数百円程度で済むものばかりですが、用意すべき書類が多いと数千円の負担はかかります。
【弁護士費用の額】
公正証書遺言に限らず、遺言書を作成するときは法律の専門家に頼るのが一般的です。自筆証書遺言に比べて形式上の不備は生じにくいものの、遺言内容自体に問題があることもありますし、遺言が無効にならなくても遺言者が望む通りの結果にならない可能性もあります。弁護士のサポートがなければ、相続開始後家族間で揉めるリスクも高まってしまうのです。
ただし弁護士費用は無視できません。具体的な額は依頼先によって異なりますし、目的の価額やその他財産状況によって変わってくることもあります。相場は10万円から20万円ほどといわれていますが、正式な依頼をする前に、しっかりと料金内容を確認しておくべきです。
公正証書遺言作成にあたっての必要書類
公正証書遺言を作成するには、以下の必要書類を準備しなくてはなりません。
・遺言者本人の確認資料
印鑑証明書、運転免許証、マイナンバーカードなど
・相続人との関係を証する書類
遺言者と相続人の関係につき記載のある戸籍謄本
・相続人以外の受遺者の住民票
遺産を受け取る人が相続人でない場合、当該受遺者の住民票が必要
※法人が受遺者となるときは、当該法人の登記簿謄本を準備
・証人の確認資料
遺言書作成には証人2人以上の立ち会いが必要であるため、その証人らにつき氏名・生年月日・住所・職業が記載された資料を準備
・遺言執行者の確認資料
遺言内容を実現する者として遺言執行者を指定する場合であって、当該人物が相続人または受遺者でないときは、その方の氏名・生年月日・住所・職業が記載された資料を準備
その他、遺言で指定する財産の内容に応じて準備すべき資料が増えてきます。例えば不動産が財産に含まれている場合、「固定資産税納税通知書」または「固定資産評価証明書」もしくは課税明細等、そして登記事項証明書も必要になります。
必要書類に関してのわからないことも弁護士に相談しつつ、作成を進めていくと良いでしょう。
相続人が複数いる場合、相続財産を協議により分割していくこととなります。例えば被相続人の子4人だけが相続人であって、相続財産が現金1,000万円だけだとすれば、1人あたり250万円に分けることで簡単に平等な分配が実現されます。
しかし相続財産に不動産が含まれている場合、そう簡単にはいきません。そこでこの記事では共同相続人がいる場合の不動産相続について、特にその分け方に関して解説していきます。
相続方法1:現物分割
・現物分割の概要:相続人の1人が単独で取得
・現物分割のメリット:権利関係が明瞭になる、自宅を残せる
・現物分割のデメリット:財産の価値にばらつきがあり、法定相続分に分けるのが困難
「現物分割」とは、遺産をそのままの形で共同相続人に分ける分割方法です。
土地が対象とされる場合であれば、分筆して各相続人に分けていきます。比較的単純な分け方であり、遺産分割における原始的手法と考えられています。
権利関係が明瞭になることから、物件の運用に関して将来的な相続人間でのトラブルも起こりにくいです。また、自宅を残すことができるという利点もあります。
しかしながら、価額を平等にすることが難しく、法定相続分できれいに分けられません。その意味で分割時に相続人間でトラブルが生じる可能性はあります。
相続方法2:代償分割
・代償分割の概要:相続人の1人が単独取得し、他の相続人は単独取得した者に相応の金銭を請求する
・代償分割のメリット:物件はそのままに、不平等の解消ができる
・代償分割のデメリット:代償金を支払う相続人に現金の負担がかかる
「代償分割」は、遺産の全部または一部を共同相続人の一部が現物で取得し、その取得した人物が他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。
物件をそのまま残すことができ、現物分割で生じ得る相続人間での不平等を「代償金の支払い」という形で解消することもできます。
しかしこの手法は常に採用し得るものではありません。なぜなら物件を取得した人物が金銭の負担を負うこととなり、支払いに応じるのが難しいケースがあるからです。
物件に加え現金等も取得している、あるいはもともと大きな資力を持っていた相続人なのであれば採用し得るでしょう。
こうした問題があることから、裁判所による審判分割においても「特別の事情があると認めるときに代償分割とすることができる」と規定されています。つまり、審判をもってしても特別の事情がなければ原則として特定の相続人に代償金としての債務を負わせることはできないのです。
なお、「特別の事情」が認められるには、①現物分割が相当でない、②不動産を取得する相続人に支払能力がある、の2点が認められる必要があります。
また、以下のポイントも押さえておくと良いです。
・審判による代償分割金では即時の支払いが原則
ただし代償金額や当事者の利益、支払期間などの事情を考慮して分割払いを命ずることも可能
・代償金は他の相続人に対する債権と相殺できない
・代償金の支払いがない場合でも債務不履行を理由に遺産分割協議の解除はできない
【相続税の計算には代償金も含める】
現物分割であれば相続税課税の問題もシンプルになります。これに対し代償分割により相続財産が分割された場合はどうなるのでしょうか。
立場に応じて課税のされ方が変わるため注意が必要です。
例えば代償金を支払った者であれば「取得した現物の価額から代償金の価額を控除」されます。
これに対し代償金を受け取る側としては「代償金を加算」して相続税の課税価格を算出することとなります。
相続方法3:換価分割
・換価分割の概要:不動産を売却することで得た金銭を分ける
・換価分割のメリット:公平な分配ができる
・換価分割のデメリット:売却に時間・手間・費用がかかる
「換価分割」とは、遺産をそのまま分割の対象とはせずに、売却してその対価である金銭を共同相続人間で分割する方法のことです。
金銭に形を変えることで公平な分配が可能となる一方、売却をするのに時間がかかりますし、そのための手間と費用も発生してしまうという難点があります。
なお、審判分割で換価分割をするには「必要があると認めるとき」に命ずることができると規定されています。例えば現物分割が困難であって、現物分割をすると価値を下げてしまうケースなどで必要性が認められると考えられています。
【相続税の計算は換価前の財産で考える】
換価分割がされたときにも、相続税の計算上、注意が必要です。
換価分割が実施された場合は、換価により分配された金額をもとに課税価格を計算するのではなく「相続開始時における、換価財産の相続税評価額」をもとに計算します。
この相続税評価額に、換価代金の取得割合を乗じて個別の額が算出されます。
相続方法4:共有分割
・共有分割の概要:単一の不動産につき相続人で共有する
・共有分割のメリット:法定相続分通りに分けることができる
・共有分割のデメリット:売却や使用にあたり権利関係が複雑化する
「共有分割」とは、ある不動産につき相続人各々の持分を定め、共有という形で分割する方法を指します。
持分を調整することで公平に分割することができますが、将来的に売却をしたくなった場面などで揉める可能性があります。
また、共有者である相続人が亡くなったときにさらに共有者が増えてしまうという問題も抱えています。そのため特段の事情がなければ共有分割は避けた方が無難と言えるでしょう。
【共有状態を解消する方法】
一度共有状態になってしまったとしても、「共有物分割の手続」を採ることで解消することができます。
共有物分割の手法として、以下4つが挙げられます。
①共有地の分割:共有持分の割合に応じて土地を分割する手法
②持分の放棄:持分を放棄して他の共有者に所有権を帰属させる手法
※共有者が死亡して相続人がいないときにも同じ効果が生じる
※課税の観点からは、このとき贈与または遺贈により取得したものと扱われる
③価格賠償による分割:他の共有者が持分に相当する金銭を支払って買い取る手法
④換価分割:目的物を売却し、その代金を持分に応じて分配する手法
相続方法の決め方
分割の方法については上で説明した通りですが、その方法の決め方についても知っておく必要があります。
当然ながら一部の相続人が勝手に「この土地は、○○分割によって分ける」と決めることはできません。
そこでまずは遺言により分割指定がされていないか、確認しましょう。次に、遺言書が作成されていない場合は、遺産分割協議により定めていきます。
しかしながら、協議ができる状況にない、あるいは話し合いがまとまらない、といったシチュエーションも考えられます。その場合には家庭裁判所に調停分割の申立を行いましょう。
調停とは裁判所による任意的紛争解決手続のことで、遺産分割以外でも広く使われている手続です。裁判所の関与は受けるものの、最終的に当事者の合意が必要である点は純粋な当事者間での協議と違いはありません。
なお、当事者間での協議や調停であれば、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割のいずれの方法も選択することができます。
他方、審判による場合はまず現物分割から検討されます。次点で代償分割、そして換価分割、共有分割の順番で検討が進んでいきます。
「どの方法で分割をすべきかわからない」「できるだけ迅速に、相続人間の話し合いだけで解決をしたい」とお考えの場合は専門家に相談してみましょう。
子どもがいる家庭において離婚や別居をすることになった場合、一方の親は子どもと一緒に過ごせなくなります。しかし離婚・別居時に取り決めた内容に従い面会交流を行うことで、以降も子どもと会うことはできます。
ただ親同士の仲が悪いと面会交流が拒否されてしまうこともあり、そうすると離れて生活する親としては子どもに会うことが困難になってしまいます。このような場合にどう対応すべきか、この記事で面会交流を実施する上で重要なことを解説していきます。
面会交流は子どものために実施するもの
そもそも「面会交流」とは、親が子どもと直接会う交流のことを言います。「両親が離婚をしていて一方の親は子どもの監護をしていない」ケース、または「婚姻中ではあるが両親が別居していて監護していない」ケースで行われます。
父または母が子に会ってする交流は「直接交流」とも呼び、他に「間接交流」と呼ばれる交流の方法もあります。こちらは電話やメール・チャット、手紙などの手段によって意思疎通を図るタイプの交流です。
いずれの方法にしろ、交流は子どもの健全な成長のために設けられている制度です。例え両親が離婚・別居していようと、子どもにとって親であることに変わりありません。一方の親が監護をすることはできなくても、愛情を注ぐことは子どもにとって重要なことで、交流によって喪失感などの精神的な負担を和らげる効果が期待できます。
面会交流等におけるポイントは、この「子どもの福祉に資するかどうか」という点にあります。そのため親が持つ子どもに会いたいという気持ちを第一に行われるものではないのです。
そこで親側が子どもに会いたいとどれだけ願っても、交流が子どもの福祉に反する結果を生む場合には会うことは叶わないでしょう。
面会交流が拒否されたときの対応
様々な事情・理由により、監護をしている親側から面会交流が拒否されることも起こり得ます。拒否が正当であると認められるケースもありますが、子どもの福祉に反しないのであれば拒否は許されません。そこでこの場合、非監護親としては以下の対応を検討することになるでしょう。
【面会交流に関する調停の申し立て】
面会交流が拒否されていて、当事者間で話し合いを図るのが難しいという場合には、家庭裁判所に対して調停の申し立てを行いましょう。
面会交流の可否やその内容について、公的機関の関与を受けつつ協議を行うことができるという手続です。
面会交流の可否に関しては、これを「禁止あるいは制限すべき事情」の有無がまず見られます。仮にこの事情があったとしても即座に交流が不可能となるわけではなく、交流方法を工夫して実施ができないかといった検討も行います。
交流の内容に関しては、「子どもの利益」を最重要視した上で、子どもの年齢や本人の意向にも配慮して検討していきます。
なお調停は、裁判所で行う手続といっても当事者の意思が尊重される柔軟性の高い手続であるため、両親のスケジュールや個別の事情にも即した形で内容を決めていくことが可能です。
そのため調停を通して当事者間の信頼関係認められると判断されたときには、交流の具体的内容が両親の協議に委ねられることもあります。他方、監護親が強く拒絶しているなど、当事者間の対立が厳しい場合もあります。このとき、当事者間の協議に委ねたのでは円滑に交流を実施できない可能性が高いため、調停条項で詳細を定めていくことになります。
【間接強制による面会交流の実現】
調停により交流の実施とその内容が定められたにもかかわらず拒否をし続けている場合、調停調書に基づいて間接強制を行うことになります。
間接強制とは、義務を履行しない者に対して制裁金を課すことで間接的に履行を強制することを言います。この場面においては、例えば「調停で取り決めた内容通りに面会交流を行わない場合、1回につき○○万円の制裁金を課す」といった形で間接強制がなされます。
【弁護士による交渉】
間接強制により心理的圧迫を加えることで、ある程度交流の機会が確保されやすくなるでしょう。しかしながら間接的に促すに過ぎず、無理やり連れだして面会を実施することまでは叶いません。さらに、間接強制まで行うことになれば両親の関係性はさらに悪化してしまうおそれもあります。
そのため、できれば間接強制を実施することなく、良好な関係性を保ちつつ交流を実現することが理想です。当事者間の話し合いでは感情的になってしまうこともありますし、冷静な話し合いをするためにも弁護士に依頼して代理で交渉をしてもらうと良いでしょう。
面会交流拒否の理由に応じた対策が重要
面会交流が拒否されたとき、基本的には上に述べた対応をすることになります。
しかし一定の場合には交流が制限されたり、禁止されたりします。以下で制限・禁止されやすい事情を挙げるとともに、各ケースにおける対策も解説していきます。
【「子どもが連れ去られるから」との主張があるケース】
面会交流をすることで「子どもが連れ去られるおそれがある」と認められるようなケースでは交流は難しいでしょう。子どもの心身の安定を害することになるからです。
ただ、このような主張を受けた場合であっても対策の余地はあります。例えば、監護親や第三者の立ち合い、第三者機関の関与を受けるようにして連れ去りの危険性がなくなるような条件を付すことで交流を実施できるかもしれません。
【「虐待を受けていたから」との主張があるケース】
離婚・別居前に子どもに対し虐待をしていたと主張して拒否されるケースがあります。また、監護親に対する虐待が理由で拒否されるケースもあるでしょう。
これらの主張内容が事実であれば交流の拒否が認められやすいと考えられますが、一方の主張のみで決定されるわけではありません。そもそも本当に虐待はあったのか、主張通りの程度であったのか、といったことは双方が提出する資料および家裁の調査官よる調査結果から判断することになります。
そのため自身に有利な証拠を示すことで相手方の主張を退けることも可能ですし、場合によっては第三者の立ち合いや第三者機関の利用によって実施できるケースもあります。
【「子どもが拒絶しているから」との主張があるケース】
子ども自身の意思で交流を拒絶していると主張されるケースもあります。このときは、子どもの年齢や発達の程度、非監護親との関係性などを鑑み、真意に基づいて拒絶しているのかどうかが見られます。
監護親の気持ちを汲み取り、子どもが本心に沿わず拒絶の意思を示すこともありますし、子どもが言ったからといって必ずしも交流が叶わなくなるわけではありません。
調査官が調査を実施することもありますので、発言が真意なのかどうかにつき争って面会を果たす余地があります。
【「再婚したから」との主張があるケース】
監護親が、再婚をしたから交流をしたくないと主張することもあります。しかし虐待や連れ去りなどの場合と異なり、再婚の事実が認められても直ちに制限・禁止される事情とまでは認められません。
面会交流を果たしたいと考える非監護親としては、弁護士に相談するなどして相手方と交渉を図るのが有効な手段と言えるでしょう。
相続財産にはどのようなものが含まれるのか、これを正しく把握しておくことが、相続後のトラブルや経済的なリスクを減らすことに繋がります。
そこでこの記事では相続対象になる具体的財産を挙げるとともに、税制上注意すべき財産についても紹介していきます。
相続の対象になる財産
亡くなった方が持っていた財産は、相続時、ほとんどが相続の対象になると考えておくべきです。
例えば、現金や預貯金などは当然その対象に含まれます。他にも宅地や家屋、有価証券なども広く相続の対象となる財産です。
宅地や家屋といった財産は不動産に属するもので、人が居住するための物件でなくとも対象となります。田や畑、山林なども相続人へと引き継がれます。
また、被相続人が個人事業を営んでいた場合には相続財産の種類がさらに増えることとなるでしょう。事業用の機械や器具、備品、商品・製品、原材料、さらには売掛金なども引き継がれます。
売掛金は現金のように現物として存在しているわけではありません。権利ですが、相続時には権利も取得の対象となるため注意しましょう。そこで、ある不動産につき被相続人が所有者でなかったとしても、当該物件に付いた借地権や耕作権、永小作権などを有していたのであればこれらも引き継がれます。
【債務(マイナスの財産)も対象】
相続人が特に注意すべきは、「債務も相続対象になる財産である」ということです。
相続により、常に経済的恩恵が得られるとは限らないのです。例えば被相続人が大きな資産を残していたとしても、それ以上の借金、ローンが残っているのなら全体としてマイナスになるおそれがあります。
相続人は早期に財産に対する調査を始め、相続を承認することにリスクがないかどうかを確認しなければなりません。
留意すべき債務の具体例を以下に挙げます。
・借金
・クレジットカードの未払い金
・医療費の未払い金
・老人ホーム、その他介護施設の使用料
・水道やガス、光熱費等、公共料金の未払い金
・未納の税金
・第三者の債務につき成立している保証
被相続人が個人事業をしていた場合、債務を含む財産状況がより複雑になります。相続放棄ができる期間内に、相続が開始されたことを知ってからできるだけ早く調査に着手しましょう。
相続税が課税される財産
原則として、上に挙げたプラスの財産に関しては相続税の課税対象です。亡くなった方の財産を相続した、あるいは遺贈により取得したという財産にも課税されます。権利に関しても同様です。金銭として見積もることができるような、経済的価値を有するすべては原則課税対象です。
そして引き継いだ財産の額が一定以上に上る場合、相続税の申告および納税義務が発生しますので注意しましょう。
みなし相続財産等に注意
本来の相続財産ではないものの、税制上、とりわけ相続税課税の観点で注意すべき財産がいくつかあります。
【死亡保険金と死亡退職金】
本来の相続財産でないにも関わらず税制上問題となる財産の代表例は、「みなし相続財産」です。
死亡保険金や死亡退職金はもともと被相続人が自由に処分できるものではありませんし、被相続人の純粋な保有財産とは言えません。しかしながら一定条件を満たす死亡保険金および死亡退職金に関しては、実質被相続人から財産を得たものとみなされ、相続税の計算に含まれるという扱いになっています。
死亡保険金について説明すると、被相続人が保険料の負担者および被保険者として設定されており、保険金の受取人が相続人(または受遺者)となっているときに条件を満たすと言えます。
このとき、生前、被保険者が保険会社にお金を納め、その後相続人等にお金が移動しているという構図にも捉えることができます。そのため課税されるとの扱いを受けるのです。
ただし一定額までは非課税とされています。
500万円に法定相続人の数を掛けた金額までが非課税枠です。死亡退職金の非課税枠に関しても同様の計算式で求められます。
よって、保険金や退職金を受け取ったとしても、そのすべてに課税がされることはありません。少なくとも500万円までなら考慮する必要はないのです。
遺言書にはいくつかの種類があります。
自分1人で作成できる自筆証書遺言として作成されるケースが多いとされていますが、もう1つ代表的なものとして「公正証書遺言」があります。
公証人や証人の面前で作成を行うため、遺言書の不備などにより遺言の内容が無効になるリスクを下げることができます。その結果、遺言内容に従った執行を実現しやすいというメリットが得られます。
この記事では公正証書遺言の作成手順に着目し、その他準備すべき書類や費用に関しても紹介していきます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公正証書として作成する遺言のことです。
公証役場にて、公証人と証人2人以上の前で作成することになります。
自分1人でも作成できる自筆証書遺言に比べて、親身になって助言をしてくれる公証人が存在する点大きく異なります。
このことにより、遺言者が望む通りの結果と実現しやすくなるとも言えます。
公正証書遺言を作成する流れ
公正証書遺言を作成する流れは以下の通りです。
1. 必要書類を準備する
2. 公証人に依頼する
3. 遺言を公証人に伝える
4. 公正証書遺言の作成日時について打合せをする
5. 公証人と証人2人立会いの下遺言書を完成させる それぞれの詳細を見ていきましょう。
【公正証書遺言を作成するための準備をする】
公正証書遺言を作成するにあたっては、以下の資料を準備しなければなりません。
遺言者の印鑑登録証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
相続人との続柄がわかる戸籍謄本
相続人以外に遺贈をする場合、その人の住民票(受遺者が法人の場合は登記事項証明書)
不動産を遺贈する場合、その登記事項証明書および固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
印鑑登録証明書は、遺言者の本人確認資料として用いられます。
場合によっては印鑑登録証明書の他、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードといった顔写真付きの身分証明書が求められることもあります。
また、証人を遺言者自身が用意する場合、その予定者の氏名・生年月日・住所・職業をメモしたものも準備しておきましょう。
その他事案に応じて、他の資料が求められることもありますので、一度公証役場にて確認をしてみると良いでしょう。
【公証人に依頼】
必要書類の準備ができれば、公証人に相談をしましょう。
直接公証役場にアポを取って公証人に相談をすることもできますし、弁護士などの専門家や銀行を通じて相談および依頼を行うことも可能です。
相談を通して、公正証書遺言として作成することの意向が固まれば、作成依頼を行います。
【遺言を公証人に伝える】
遺言の内容を公証人に伝えます。
メールや郵送、また直接相続内容を記載したメモを持っていくのでもかまいません。
当該メモには、遺言者が有している財産の内容、各財産を誰にどの程度渡したいのかを明確にしておきましょう。
また、遺言を伝えると同時に、用意した本人確認書類などの資料も提出します。 これを受け、公証人が遺言書の案を作成します。
案はメールなどにより遺言者に伝えられますので、内容を精査しましょう。修正が必要な場合にはその旨公証人に伝えましょう。
【遺言公正証書の作成日時の打合せ】
遺言書案の確定後、公正証書遺言の作成日時について打ち合わせを行います。
この打ち合わせは、通常遺言者が公証役場に出向くことになりますが、移動が難しい場合には公証人に出張を依頼することも可能です。
なお、遺言書案の確定により公正証書遺言作成費用の額も確定します。そのため案が確定し次第公証人から手数料の金額に関する通知も受けることになるでしょう。
【公証人と証人2人立会いの下遺言書を完成させる】
作成当日は、遺言者と公証人、そして証人2人以上が立会います。
遺言者が改めて遺言を公証人に対して口授します。公証人は、判断能力を持つ遺言者によってなされた遺言であることを確認し、遺言書の案に基づいて用意しておいた公正証書遺言原本を読みます。
遺言者本人と証人に読み聞かせる、また閲覧させ、その内容に間違いがないことをチェックしてもらうのです。
遺言内容に間違いがないことが確認できれば、遺言者と証人が遺言書原本に署名押印をします。さらに、公証人も原本に署名、および職印の押捺をして、完成に至ります。
公正証書遺言の作成にかかる費用
公正証書遺言を作成するには費用が必要です。
そしてその金額は、遺言の目的となる価額に応じて決定します。
そしてこれら公証人手数料を定めた政令によると、最低でも5,000円が必要です。
遺言の目的となる価額が100万円以下なら一律5,000円で、段階的に増額されていきます。
仮に価額が1億円であれば43,000円が手数料になります。
なお相談に対し費用はかかりません。
遺言の撤回や変更も認められる
公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて厳格な手続きを要しますが、撤回・変更なども可能です。
遺言書作成後、様々な事情により、内容を変えたいと思うときがくるかもしれません。
公正証書として作成したからといって変更ができなくなるわけではないため、早期に変更の手続きを行いましょう。
ただし、自筆証書遺言と違って原本が公証役場に保管されています。
そこで内容を変えたいときには、変更後の内容を記した遺言書を自筆し、自宅で保管するのではなく、新たに公正証書遺言を作成する形で変更等を行うと良いでしょう。