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遺産相続では、遺言書の確認や相続人の確定、遺産分割協議など、多くの手続きが必要となります。スムーズに財産を引き継ぐには全体の流れや注意すべきポイントを事前に把握しておくことが大切ですので、ここで相続人が押さえておきたい基本的な手順などを解説していきます。
遺産を受け取るまでの全体の流れ
遺産相続全体の流れは次のようにまとめることができます。
1.
遺言書を確認する
2.
相続人や遺産を調べる
3.
相続放棄について検討する
4.
遺産分割協議を行う
5.
取得した財産について名義変更を行う
6. 必要に応じて相続税の申告・納付を行う
遺言書は作成されているケースと作成されていないケースがありますし、相続人が1人しかいないときは遺産分割協議を行いません。相続税についても課税されないケースが多いですし、各種相続手続きは状況により大きく変わるということは覚えておきましょう。
相続手続きのポイント
各種手続きのポイントをいくつか紹介します。
l 遺言書の封は開けずに検認を行うこと
l 戸籍から相続人情報を読み取ること
l マイナスの財産も調査すること
l 相続放棄・限定承認は3ヶ月以内に行うこと
l 相続税も考慮して遺産分割すること
l 遺産分割の結果は書面にまとめること
詳細は下記の通りです。
遺言書の封は開けずに検認を行うこと
もし亡くなった方の自宅から遺言書が見つかったとき、その遺言書が封筒に入っているなら開けないように注意してください。
遺言書が見つかったときはまず家庭裁判所に持って行き、相続人ら立ち会いのもと開封を行わなければいけません。この手続きは「検認」と呼ばれ、遺言書が作成されていることやその内容、現時点での遺言書の状態などを確認するために実施します。
※公証役場や法務局で保管されている遺言書については検認不要。
戸籍から相続人情報を読み取ること
相続人は、戸籍謄本等を読み取ることにより調査します。基本は配偶者や子が相続人となりますので、大方の場合厳密な調査をしなくても相続人の存在は明らかです。それでも、元配偶者との間に生まれた子やその他家族が把握できていなかった相続人が出てくる可能性はゼロではありません。
そのため、必ず亡くなった方の戸籍謄本等を取得して漏れのないように調べてください。少なくとも亡くなった方についての一生分、一連の戸籍情報が必要です。請求方法や戸籍情報の読み取り、法定相続人の判断についてわからないことがあるときは、弁護士にご相談ください。
マイナスの財産も調査すること
財産調査も漏れのないようにすることが大事で、特に借金などのマイナスの財産については要注意です。
亡くなった方の自宅を調べて貸金業者や金融機関からの書面が保管されていないか調べてみましょう。金銭消費貸借契約書やその他通知書が届いているかもしれません。手がかりとなる資料がないときでも、不安があるときは信用情報機関に問い合わせてください。
相続放棄・限定承認は3ヶ月以内に行うこと
相続をしないという選択をするときは、相続開始の事実を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行います。
大きな借金が残っているときなどに「相続放棄」を考えることになるでしょう。あるいは「限定承認」という選択肢も検討します。限定承認をするとすべての遺産を相続することにはなりますが、借金等の返済義務は相続したプラスの財産の範囲に限定されます。そのため予想外に大きな債務が残っているときにも対処できますし、どうしても受け継ぎたい財産があるときにも適しています。
相続税も考慮して遺産分割すること
相続人が複数いるときは遺産を分割します。このときの話し合いが「遺産分割協議」です。法定の相続割合を基準に分割することが多いですが、その際は相続税のことも考慮してください。
遺産の総額が数千万円以上、1億円を超えるような場合は相続税の負担が発生する可能性が高いため、相続税の負担が小さくなるように工夫したり、次の相続(二次相続)を意識した工夫をしたり、税理士にも相談しながら分割方法を検討してください。
遺産分割協議の結果は書面にまとめること
遺産分割協議の結果は「遺産分割協議書」にまとめましょう。法的な義務ではありませんが、実務上は必須と捉えておくべき書面です。
これが作成されていないと、後になって遺産分割の方法について争いが生じる危険性がありますし、各財産の名義変更を行う際にもご自身が所有者となったことについての証明が難しくなってしまいます。
作成の仕方に決まりはありませんが、少なくとも相続人全員が合意をした旨の表示や全員の署名捺印はしておきましょう。
相続手続きでかかる費用
相続手続きでは費用がかかりますが、手続き一つひとつにかかる費用はそれほど大きなものではありません。
例えば検認を行う際は収入印紙代800円と郵便切手代数千円、検認済証明書の発行に150円、添付書類である戸籍謄本等に数百円がかかる程度。相続人の調査でも戸籍謄本の取得で1通あたり450円、除籍謄本や改製原戸籍なら1通あたり750円です。
遺産の調査を行うときも問い合わせ先によって金額は異なるものの、残高証明書やその他開示請求にかかる手数料は1,000円程度、高くても数千円程度です。
一方、専門家を利用するときはもう少しまとまった費用を準備することになります。金額は依頼先により異なり、ピンポイントで代行を頼むときは作業内容にもよりますが数万円から10万円ほど、総合的にサポートをしてもらうときは遺産総額の一定割合(数%ほど)で算定されることがあります。
ご自身で対応すればこの費用は浮かせることができますが、おすすめはできません。手続きが難航して親族間で揉めるリスクが高まりますし、第三者との間でトラブルが起こるリスクも高まってしまいます。
子どものために、離婚後も「面会交流」を実施して別居親が子どもと会うケースはよくあります。交流の頻度や実施方法などは法定されておらず、ある程度自由に定めることができます。しかし夫婦間で意見が揃わないときは裁判所で行う調停の手続によりその内容を取り決めることとなります。
調停委員の関与もあることから、単なる夫婦間の協議とは異なる注意点があります。ご自身にとって有利な結果とするためにはその注意点を踏まえて手続に臨むことが大事ですので、ここでそのポイントを紹介していきます。
面会交流の決め方について
面会交流について話し合うためには、面会交流の意義について理解しておく必要があります。まず押さえておきたいのは「面会交流は、子どものために実施するもの」であるという点です。子どもと会いたい親のために実施するものではありません。
突然両親と会えなくなった子どもに悪影響が及ぶ恐れがあり、精神的な安定を得るためにも面会交流は重要なものと捉えられています。
そのため、「自分にとって、子どもと会うことは非常に重要で価値のある行為だ」あるいは「自分にとって、離婚後も相手と子どもを会わせることは気が滅入るから嫌だ」などと主張することは本質からずれてしまっています。
面会交流とは何かを理解していれば、どのように主張すべきか、交渉をすべきかが見えてきます。
また、面会交流は原則として実施するものだということも知っておきましょう。特段の事情がない限り、面会交流は子どもの利益に資するものだと考えられていますので、面会交流を拒否したいとしても、その主張は簡単に実現できるものではありません。
夫婦間の協議で決める
調停で面会交流について取り決めることができますが、通常、いきなり調停を申し立てることはありません。まずは夫婦間の協議から始めます。特に窓口で何か手続をするなどの必要はなく、2人の間で面会交流を行うかどうか、どのように行うのかを決めるのです。
しかし面会交流について意見がまとまらないときは、調停の利用を検討することになります。
調停や審判で決める
裁判所を介して面会交流について話し合う場合、まずは調停を始めます。調停では調停委員が登場し、ご自身と相手方との間に立って話を聞いてくれます。調停委員は法律のプロであり、面会交流や離婚に関して豊富な経験と高度な知識を持ち合わせています。調停委員の見解を参考にすることで実現可能性の高い目標を見定められるようになりますし、一方が法的に無理のある主張をしているときでもその事実に気付くことができます。
基本的には次のような流れで手続は進みます。
1.
調停の申し立て
2.
第1回目の調停期日が開かれる
3.
必要に応じて出頭勧告や調査などが行われる
4.
第2回目以降の調停期日が開かれる
5. 調整の成立または不成立が決まる
調停が不成立となったときは、「審判」の手続へと移行します。審判では裁判所が判断を下すことになりますが、不服を申し立てることは可能です。
面会交流調停の注意点
面会交流調停で不利な結果に終わらないようにするため、次の点に注意しましょう。
l 調停委員に対して冷静に事情を伝えること
l 面会交流の実施方法は慎重に検討すること
l 子どもへの悪影響の有無を伝える
l 弁護士にも相談して対策を立てておくこと
それぞれについて詳しく説明していきます。
調停委員に対して冷静に事情を伝えること
調停では、相手方を説得することだけに執着するのではなく、調停委員に納得をしてもらうことも目指しましょう。
冷静になり、家庭の状況など、詳しい情報を調停委員に伝えることが重要です。その上で主張する内容の正当性、理由があることを理解してもらうよう努めます。感情的になり深い議論ができないと、ただわがままを言っている印象を持たれるおそれがあります。
面会交流の実施方法は慎重に検討すること
面会交流の実施方法等について、将来のことも想定して慎重に検討を進めましょう。
いったん取り決めを行うと、容易に変更することはできません。条件変更も不可能ではないのですが、相手方が同意しないときは再び調停を開くなど、大きな手間もかかります。
例えば「再婚をしたときどうするのか」についても考えておきましょう。子どもと同居する親が再婚をしたとしても、当然に面会交流は拒否できません。
子どもへの悪影響の有無を伝える
面会交流の実施自体を争うときは、「子どもの利益」や「子どもに与える影響」に着目することが大事です。上述の通り、親の個人的な感覚で主張を行うべきではなく、子ども目線で考える必要があります。
もし面会交流を行わせたくないと考えているのであれば、「面会交流の実施が子どもに悪影響を及ぼす」ことを示すことになります。例えば過去に相手方が虐待をしていたこと、子どもを連れ去ろうとしたことなど、何かしらの危険の存在をアピールすることが大事です。写真やその他の証拠でその事実が示せるとより有利に話を進めやすくなります。
逆に面会交流を拒絶されている別居親からすれば、そのような事実がないこと、子どもの利益のために必要であることを主張する必要があります。
弁護士にも相談して対策を立てておくこと
面会交流は法律も絡む問題です。また、離婚後も長期的に面会交流は実施されるものですので、納得のいかない結果になると長く不満を抱え続けることになってしまいます。できるだけ最初の取り決め段階で納得のいく結果を得ておくことが重要であり、そのためにも弁護士への相談・依頼が欠かせません。
離婚や養育費、面会交流に関することなど、家庭の問題に多く取り組んできた実績を持つ弁護士を探し、まずは相談をしてみましょう。
弁護士が直接相手方と交渉し、場合によっては調停や審判を行うことなく問題を解決できるかもしれません。「相手がまともに話し合ってくれず困っている」という場面でも、弁護士から連絡が来ることで本気であると伝わります。すぐに返答が得られ、円滑に話し合いが進められる可能性も高まります。
認知症となり判断能力が落ちてしまうと、法的なリスクが高まってしまいます。相続の場面でもスムーズに手続きが進められなくなり、また、思うように遺産を分けられなくなることもあります。
この問題は「被相続人(亡くなった方)が生前、認知症になるケース」「相続人(遺産を受け取る方)が認知症になるケース」のいずれにおいても起こり得るものであり、それぞれの立場から対策を取ることが求められます。
そこで当記事では、各ケースについての事前対策や相続開始後の対応を紹介していきます。
被相続人が認知症になるケースについて
被相続人となる方は、事前に遺言書の作成をしておくなどいくつかの相続対策を講じておくことができます。これによって自分自身の意思を反映した遺産分割ができるようになりますし、残された相続人たちも揉めずに済みます。
しかしながらこの方が認知症になっていると、単独で有効な法律行為ができなくなり、生前の対策が上手く進められなくなってしまいます。
放置した場合のリスク
認知症になった方をそのまま放置することで「適切な財産管理ができず将来の遺産が少なくなってしまう」というリスクが生じます。
認知症の進行により、被相続人となる本人が適切な判断をできなくなり、不用意に不動産を売却してしまったり不利な条件で賃貸借契約を結んでしまったり、最悪の場合悪意ある第三者により騙されて金銭を取られることも起こり得ます。
これは本人にとっても重大な問題であり、さらに家族など将来相続人となる方にも影響が及ぶ問題でもあります。
認知症になる前にしておきたい対策
高齢になると認知症リスクが高まりますので、できるだけ相続対策も早めに進めておくことが大事といえます。そこで以下の対策を検討・実施することをご検討ください。
遺言書の作成 |
遺言書があれば、被相続人の意思を尊重した遺産分割がスムーズに行える。 判断能力に少しでも不安があるなら、遺言者1人で作成する「自筆証書遺言」ではなく「公正証書遺言」がおすすめ。法律のプロである公証人が作成手続きに関与するため、後で無効になる危険性が小さい。 |
任意後見契約の締結 |
将来、判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人に財産管理や身上監護を委託するための契約。判断能力が低下してから始める法定後見とは異なり、本人の意思を強く反映させられるという特徴を持つ。 |
家族信託の活用 |
成年後見制度とも近い性質を持つが、財産管理・資産運用に特化して他人に委託するときは家族信託が適している。複雑な取扱い、高度な運用ができるため、信託の仕組みを使って相続対策も取れる。 |
財産目録の作成 |
自分自身の財産状況を整理し、不動産・預貯金・株式などの財産の内容と金額を明確にしておけば相続人がスムーズに相続手続きを進められる。 |
生前贈与の検討 |
多くの財産を保有している場合は相続税の負担も大きくなる。相続税対策として有効な手段の一つが「生前贈与」であるが、有効な贈与契約を交わすには認知症になる前、契約の効果・意味を理解するだけの判断能力が必要。 |
認知症になってからの対応
認知症になってから(厳密には、特定の法律行為が有効にできなくなる程度に判断能力が下がってから)だと、本人にできることはかなり制限されます。例えば次のような行為は相続対策として一般によく行われていますが、認知症になることで無効になるリスクがかなり高くなるのです。
l 不動産の修繕や売却
l 預金口座の解約や引き出し
l 生命保険への加入
l 子どもや孫などへの贈与
l 遺言書の作成
l 株式の売買 など
とはいえリスクの高い状態を放置すべきではありません。もし認知症と診断されていてもそれがかなり軽度であれば、遺言書も有効に作成できる可能性が残っています。そこで医師の診断に加え弁護士にも相談し、本人に遺言能力が残っているかどうかの評価をしてもらいましょう。もし可能なら、認知症がさらに進行してしまう前に、公正証書遺言を作成することも検討します。
ほかには、判断能力低下に起因した散財や詐欺被害に遭わないよう、法定後見制度の利用も考えてみましょう。裁判所が本人の状況に合わせて成年後見人や保佐人、補助人を付けてくれます。これら後見人等は本人の法律行為を支援し、場合によってはいったんした行為も取り消すことが可能となります。
認知症の方が相続人になるケースについて
次に、相続人目線で認知症のリスクや必要な対応について説明します。
相続手続きに関わる問題点
相続人が認知症の場合、以下の問題点が生じることがあります。
l 遺産分割協議への参加が困難
→ 認知症の進行状況によっては遺産分割協議への参加が難しくなる。判断能力が不十分な状態で合意をしても無効となる危険性がある。
l 遺産分割で不利になる
→ 判断能力が低下していることを逆手に取って、他の相続人が自分に有利な遺産分割をしてしまう可能性もある。
l 相続財産の管理が困難
→ 認知症の方が相続によって大きな資産を手に入れたとしても、その後の管理が困難で、詐欺被害に遭ったり浪費してしまったりするリスクも考えられる。
事前対策や相続開始後の対応
前項のような問題に対しては「法定後見制度の利用」により対処します。
家庭裁判所が選任した後見人等が遺産分割協議に参加し、本人を保護するために適切な意見を主張します。これにより本人の権利は守られ、また、遺産分割協議が無効になるリスクも排除できます。
また、可能であれば事前に対策を打っておきましょう。すでに認知症の方がおり、まだ相続が開始していないのなら、被相続人となる立場の方は「遺言書の作成」「家族信託を始める」「生命保険に加入する」などの対応をご検討ください。
対応に困ったときは弁護士に相談
認知症は、本人だけでなく家族や周囲の人にも大きな影響を与える病気です。相続手続きも難航する可能性が高くなります。
そこで相続に関しての認知症対策を取りたい方、認知症を不安視している方は、弁護士にご相談ください。相続に強い弁護士が関わることで次のような利点が得られます。
l 遺言書の有効性や法律行為の有効性について専門的な見地から判断をしてもらえる
l 認知症の進行状況に応じた適切な相続対策を提案してもらえる
l 成年後見制度利用の申し立てなど必要な手続きをサポートしてもらえる
l 遺産分割協議をスムーズに進めるためのアドバイスや交渉をしてくれるなど
認知症はいつ発症するのかわかりませんし、いつ急速に進行するのかもわかりません。そこで早期の対応を心がけましょう。
離婚後も、子どもを監護していない親は子どもと面会を行います。この「面会交流」は子どもの健全な成長を助けるための場であり、さまざまな事情を考慮して実施方法を定めていきます。
親同士で話し合って具体的内容を決めるのが基本ですが、上手くいかないときは調停を申し立てることとなります。ここではそのときの手続について言及し、費用のことや必要書類のことについてもご紹介いたします。
面会交流の調停とは
面会交流を実施する頻度、子どもと会う場所、交流の方法、曜日や時間帯、引き渡しの方法などの詳細は、まずは父母の協議により検討するのが基本的な流れです。
裁判所など公的な機関を挟む必要はなく、当事者間で好きなようにルールを定めてもかまいません。
しかし離婚時に揉めているときは上手く協議がまとまらないことも多いです。そこで「なかなか条件のすり合わせができない」「2人だけで話し合いができる状況にない」といった場合には、家庭裁判所に調停の申し立てを行います。
調停とは、話し合いを裁判所がサポートして紛争解決を図る手続のことです。訴訟のように勝ち負けを裁判官が結論付けるものではなく、あくまで当事者間の合意・和解を目指す手続です。
面会交流に関しても調停で話し合いを進めることができ、純粋に2人だけで話し合う場合に比べて解決しやすくなります。
調停を申し立てる方法
面会交流の調停を申し立てることができるのは、「父」と「母」です。
申し立てを行う方が、相手方の住所地にある家庭裁判所(夫婦で決めた家庭裁判所でも良い。)にて手続を行います。同居しているときは特に意識する必要がありませんが、遠方で別居しているときは申し立て先に注意しましょう。
必要書類
面会交流の調停を申し立てるときは、次の書類を準備しないといけません。
必須の書類 |
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申立書とその控え3通 |
裁判所用・申立人用・相手方用の3通が必要。 申立書の書式は、裁判所の公式HP(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_30/index.html)からダウンロードできる。 |
子の戸籍謄本 (全部事項証明書) |
最寄りの市区町村役場で取得可能。 ※本籍地が遠方にあるときでも、どこの役場でも取得が可能。 |
その他裁判所から提出を求められる書類例 |
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事情説明書 |
調停を申し立てた経緯・理由、調停で話し合いたい事柄などを記入したもの。 |
連絡先等の届出書 |
日中、連絡の取れる電話番号等を裁判所に伝えるためのもの。 |
進行に関する照会回答書 |
日程の調整、相手方と会わないようにする配慮のことなど、進行に関して共有しておくべき情報を記入したもの。 |
その他指示を受けることもありますので、例えばご自身の主張を裏付けるための資料を準備するなど、必要な備えを進めておきましょう。
費用
調停の申し立てには費用もかかりますが、次のように大きな額ではありません。
l 収入印紙1,200円分
・・・子ども1人につき1,200円が必要。
l 連絡用の郵便切手1,000円程度
・・・申し立て先の家庭裁判所にて要確認。
必要書類を準備するときの注意点
裁判所に提出した書類から、(元)配偶者に対して住所等の情報が漏れる可能性があります。
もし、相手方に知られたくない情報があるときは、提出書類に記載しないようにしてください。源泉徴収票の住所やマイナンバーなど、“裁判所に見える必要がない”と思われる部分に関しては、黒塗りにするなどして見えないようにしてから提出します。
一方で、相手方に知られたくないものの“裁判所に見せる必要がある”という箇所については、「非開示希望」または「当事者間秘匿」の手続を行いましょう。
相手に住所を知られると困るときの対処法 |
|
非開示希望の手続 |
・相手方からの閲覧謄写申請に備え、事前に情報の非開示を希望するための手続。 ・住所などを知られることで、申立人自身あるいは家族の生活が危ぶまれるときに認められる。 ・裏付け資料の提出、手数料などは不要。 ・申立書以外の資料に含まれる、住所以外の情報も適用対象となり守られる。 |
当事者間秘匿の手続 |
・氏名や本籍、住所など、本人を特定する情報を隠すための手続。 ・個人の特定をされることで、申立人自身の生活が危ぶまれるときに認められる。 ・「秘匿決定の申立書」「秘匿事項届出書面」「社会生活に著しい支障が生じるおそれについての裏付け資料」の提出と、申立手数料が必要。 |
黒塗りや非開示等の手続を行わない場合、裁判所を介してそのまま相手方に居場所や連絡先などを知られてしまいます。DV被害を受けていたり子どもを連れ去られるリスクがあったりするときは、ご自身の手で見えないようにしてください。
もし、やり方についてわからないことがある、不安がある、というときは弁護士を頼りましょう。
相続人は、遺産に含まれるすべての財産を引き継ぎます。この財産には資産も負債も含まれており、プラスの価値があるものもあればマイナスの価値があるものもあります。そこで、借金が残っているときにはその支払いを肩代わりすることになってしまうのです。
しかしこれを回避する「相続放棄」という手段がありますし、相続によるリスクを抑える「限定承認」という手段もあります。借金を相続することになりそうな場合は、この2つの手段について知っておきましょう。
相続放棄をするとどうなる?
「相続放棄」は、相続人ではなくなるための手続です。
法律上も、相続人として相続を受け入れることが強制されるわけではありません。相続を放棄して一切の資産も負債も引き継がないという選択も可能なのです。
そこで相続放棄をすると、借金を肩代わりする必要はなくなります。被相続人がどれだけ大きな借入をしていたとしても、その責任を負わなくていいです。
ただ、預金や現金、不動産、株式などの財産も取得できなくなります。代々承継してきた土地や建物がある場合でも、都合良く特定の財産をもらい受けることはできません。
限定承認をするとどうなる?
「限定承認」は、限定的に相続を受け入れるときの手続です。
何の制限もなく相続を受け入れることを「単純承認」と呼ぶのですが、限定承認でも単純承認をしたとき同様にすべての財産を取得することになります。しかしながら、借金の支払い義務など、責任の部分を制限することができるのです。
「取得したプラスの財産」に相当する部分まで制限ができますので、相続によって大きな不利益を被るリスクが抑えられます。
※例:1,000万円の現金と1,500万円の借金を相続したとき、借金の返済義務を1,000万円までに限定できる。
相続放棄と限定承認の比較
借金が残っている場面では、相続放棄と限定承認のどちらを選択してもリスクを回避することができます。このように共通点もあれば相違点もあります。それぞれ利用が適している場面が異なりますし、両者の特徴をよく理解のうえ選択することが大事です。
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相続放棄 |
限定承認 |
共通点 |
相続開始から3ヶ月以内の手続が必要 |
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手続のやり直しができない |
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大きな借金が残っている場合のリスクが回避できる |
||
相違点 |
一切の財産を取得しない |
すべての財産を取得する |
借金の返済義務を負わない |
借金の返済義務が限定される |
|
手続は相続人1人でできる |
手続は相続人の全員で行う |
どちらも3ヶ月以内の手続が必要
どちらを選択する場合でも、相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続をしないといけません。
手続は家庭裁判所(被相続人最後の住所地を管轄する家庭裁判所)で行い、申述書や添付書類等を準備して期間内に提出します。提出後、裁判所からの求めに応じて質問等に回答し、申述内容が受け入れられれば無事相続放棄または限定承認が認められます。
3ヶ月以内に手続を行わない場合は原則として単純承認をしたことになってしまいます。つまり、どれだけ大きな借金が残っている場合でも、相続人がその責任を制限なく負うこととなります。
手続の負担は限定承認の方が大きい
限定承認には次のメリットがあります。
l 想定以上に大きな借金が見つかっても対処できる
l 残したい相続財産を取得できる
そのため明らかに借金の方が大きな場合を除けば「限定承認を選択しておいた方がお得ではないか」と思われるかもしれません。
しかしながら、限定承認には手続の負担が大きいという特徴もあります。手続の負担は主に次の観点から説明ができます。
l 相続人の全員が限定承認をすることについて合意しないといけない
l 被相続人の財産について清算をしないといけない
リスクを抑えられる代わりに清算処理を相続人自身で行わないといけないのです。債権者に対する通知や弁済、必要に応じて財産の換価なども行います。
ただ、これらの手続を弁護士に任せてもかまいません。「手間をかけたくない」「債権者とのやり取りに不安を感じる」といった場合でも弁護士がついていれば安心して相続手続を進められるでしょう。
手続選択のポイント
そのまま単純承認をするのか、それとも限定承認や相続放棄を選択するのか、判断にあたって重要なポイントを整理すると次のようにまとめられます。
l 遺産調査により資産や負債が明らかになっているか
l どうしても残したい財産はないか
l 相続人同士の意見を一致させられるか
l 手続に時間をかけられるか
もし遺産調査が十分に進んでいて明らかにプラスの財産の方が大きいのなら単純承認で問題ありません。逆に明らかにマイナスの財産の方が大きいのなら相続放棄も検討することになるでしょう。
ただ、どうしても残したい財産があるのなら限定承認を選ぶ必要がありますし、調査が十分ではないあるいは財産関係が複雑で不明瞭な部分も多く残っているのならやはり限定承認を選択することも考えます。
一方で、限定承認を選んだ方が良さそうな状況にあっても相続人間の合意がなければ限定承認はできません。手続に時間を取られなくない場合にも相続放棄を考えることになるでしょう。
相続が始まったときは、まず相続人や遺産の内容を調べましょう。調査の結果、不動産が含まれていることがわかればその他の遺産も含めて遺産分割を行い、所有者を決めます。不動産に関しては相続登記が必要になったりその際登録免許税が発生したり、その他の財産にはない特色がありますので、特に注意が必要です。
当記事では「不動産相続の全体像を掴むこと」をゴールとし、流れや費用について解説をしております。
不動産を相続するときの手続
遺産相続をするとき、相続人同士で協議を行い遺産分割の方法を決めていきます。そのためには物件情報を詳しく調べておく必要がありますし、書類集めも必要になるでしょう。さらに法律上の義務として、所有者が変わったことを登記しなくてはなりません。
事前調査
不動産を相続する場合に限った話ではありませんが、まずはいくつか調査すべき事項があります。
1つは「法定相続人」です。
被相続人の戸籍情報を基に誰が相続人になるのかを明らかにしていきます。法定相続人の人数によって法定相続分が変わることから、不動産の分割方法に影響することもあるのです。また、法定相続人全員で協議をしないと遺産分割を有効に成立させることはできません。
もう1つ調査すべきことは「遺産」です。
被相続人の持っていた権利や義務のすべてを明らかにし、それぞれの価額も調べていきます。もし不動産が唯一の遺産だとすれば、利益を公平に分けるためにも遺産分割に工夫が必要です。一方で不動産の占める割合が小さくなるほど大きな遺産総額があれば、不動産を誰か1人が取得しても利益バランスが大きく崩れることなく、揉め事も避けやすくなります。
遺産分割協議
事前の調査が済めば、法定相続人の全員で遺産分割のやり方について話し合いましょう。
このときの目安は法定相続分です。「子ども同士」や「兄弟姉妹同士」、「父と母」なら均等に分割した値が法定相続分となりますが、配偶者と共同相続するときは以下の割合を頭数で均等に分割した値が法定相続分となります。
配偶者と共同相続するときの法定相続分は・・・
l 子ども :遺産全体の1/2
l 父母 :遺産全体の1/3
l 兄弟姉妹:遺産全体の1/4
その割合に配慮しつつ、不動産の所有者を決めていきます。誰か1人がそのままの形で取得する「現物分割」だと利益に大きな偏りが生じることもあるでしょう。現物分割が難しいときは「代償分割」や「換価分割」、あるいは「共有」という方法もあります。
不動産の分割方法 |
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現物分割 |
・物件を1人でそのまま取得する方法 ・手続が簡単 ・遺産総額のうち不動産が占める割合が大きいときは、相続人間で受ける利益に偏りが生じやすい |
代償分割 |
・物件を1人でそのまま取得し、その他の相続人に金銭を支払う方法 ・不動産を取得しない相続人と利益の偏りが生じても是正できる ・取得者に金銭の負担がかかる |
換価分割 |
・物件を売却して得た金銭を相続人で分け合う方法 ・均等な遺産分割が実現できる ・売却手続に手間と時間がかかってしまう |
共有 |
・物件を複数人で一緒に所有する方法 ・手続が簡単 ・今後の管理を一緒に行う必要があり、後々トラブルが起こるリスクが高い |
相続登記
不動産を取得した場合、相続登記が必要です。
2024年4月からは相続登記が法律上の義務となっており、これを行わない場合には過料と呼ばれるペナルティを科される危険性があります。
3年以内に登記申請の義務を果たせば良いため急ぐ必要はありませんが、長く放置していると第三者に権利を主張できず大きなトラブルに発展するおそれもあるため要注意です。
不動産相続にかかる費用
不動産相続にかかる費用についても簡単に紹介いたします。
登録免許税
相続登記をするときに「登録免許税」の納付が必要です。
不動産の価額(課税標準額)に一定の税率を乗じることで納付額が算出できるのですが、相続の場面では基本的に税率「0.4%」で計算します。
※遺贈で取得したときは「2.0%」の税率が適用されるが、法定相続人に対する遺贈であれば「0.4%」で計算する。
つまり、価額が2,000万円の物件であれば、次の計算式に基づいて8万円の登録免許税が発生するとわかります。
2,000万円×0.4% = 8万円
相続税
取得した財産の価額に応じて相続税の負担も生まれます。
ただし基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と定められていますので、遺産の総額が基礎控除額以下であれば非課税で取得可能です。
一方、基礎控除額を上回る遺産を取得したときは、その残額や法定相続人の数などに応じた相続税の負担が発生します。
※特例や税額控除によって相続税の負担が発生しないこともある。
例)遺産は不動産のみ(相続税評価額5,000万円)。法定相続人は被相続人の子Aのみとする。
課税遺産総額 = 5,000万円-基礎控除額3,600万円
= 1,400万円
相続税の総額 = 1,400万円×税率15%-控除額50万円
= 160万円
非常にシンプルな例ですが、このように税額を調べることができます。実際には債務控除や小規模宅地等の特例、各種税額控除などが適用できることもありますし、法定相続人の数や分割した割合によっても税額は変わってきますので要注意です。正確に相続税の大きさを調べたいときは税理士に頼むことをおすすめします。
専門家費用
相続手続を進める過程で専門家を利用することもあります。相続登記であれば司法書士に、相続税については税理士に、相続人や親族、その他関係者と揉めたときには弁護士に相談・依頼をして解決を目指します。
相続手続は専門性も高く、一般の方が対応するにはハードルが高いといえます。そのため相続開始後は専門家探しに取り組むことも重要で、依頼には費用がかかることも覚えておきましょう。
金額は依頼をする専門家によって異なりますので、相談をしたときに聞いておき、見積もりも出してもらっておくと良いです。
日本人の平均寿命は徐々に延びていますが、その年まで判断能力を維持できている方ばかりではありません。認知症により1人で判断することが困難になっている方も少なくありません。
「気付けば判断能力が低下していた」というケースも珍しくなく、自覚する前から対策を採ることが重要といえます。そこで任意後見制度の利用を検討してみましょう。当記事でも手続の方法・流れ・費用についてまとめています。
任意後見制度の概要
任意後見制度は「成年後見制度」の1種です。
判断能力が衰えた本人の法律行為をサポートするための仕組みが成年後見制度であり、その制度の利用にあたって“本人が前もって契約締結をして備えるタイプ”が任意後見です。
任意後見とは別に、“本人の判断能力が衰えてしまったため裁判所に申し立てて始めるタイプ”が法定後見です。
任意後見では本人が主導して契約内容(サポート内容)を考えていくことになりますが、他方の法定後見では法律により定められている枠組みを活用することになります。
任意後見を始めるための手続
任意後見を始めるには、支援内容を契約書にまとめなくてはなりません。公証役場で公正証書を作成し、登記をしてもらい、その後家庭裁判所への申し立ても必須です。以下に掲げる手順で手続を進めていきましょう。
任意後見人になってもらう人物の検討
契約に定めた法律行為を本人に代わって行う「任意後見人」との契約が必要です。
※この時点では「任意後見受任者」と呼ばれる。任意後見が始まってから「任意後見人」と呼ばれる。
そこでまずは信頼できる方を見定めて、任意後見人になってもらえないかと依頼をしましょう。以下に掲げる者に該当すると後見人にはなれませんが、基本的に自由な人選が可能です。
l 18歳未満(未成年)の方
l 以前に後見人から解任された経歴がある方
l 破産手続中の方
l 以前に訴訟トラブルになったことがある方
ただし任意後見人には大事な財産の管理などを任せることになりますので、①横領などの心配の有無、②財産管理や法律行為についての知識・経験の有無、の2点は要チェックです。大きな権限を預けることとなりますので、経済力や特別な業務経験など、さまざまな観点から評価を行いましょう。
支援内容の検討
続いて任意後見受任者と任意後見の内容を考えていきます。あくまで契約ですので本人の一存で支援内容を決めることはできません。両者の合意があって初めてその契約は機能します。
そこで相手方の意見も取り入れながら、「身上監護」「財産管理」についてのサポート方法などを具体化していきます。
身上監護
生活を維持するための契約行為などの支援。
介護が必要になった場合のケア計画を策定して、どのような生活を希望するのか、どのような医療・介護を希望するのかを定めていく。
財産管理
現金や預貯金の取り扱い方法、土地や建物、株式などの管理方法なども定めていく。売却や賃貸に出すかどうかに関しても検討する。
また、任意後見人に対する報酬の有無や金額についても考えておきましょう。何も定めを置かなければ無償ということになりますが、任意後見人による不正の防止やモチベーション維持の観点も含めてよく考えることが大事です。
公正証書の作成と登記
任意後見は、一般的な契約とは異なり、当事者間の合意をもって即座に効力を生じさせることはできません。
少なくとも契約内容を公正証書に残さないといけません。そこで当事者間で定めた契約内容を公証人に伝えて、任意後見契約の公正証書を作成してもらいましょう。手続は公証役場で行いますので、事前にアポを取っておく必要があります。
公正証書の作成が済めば、公証人が登記手続を進めてくれます。後見が開始されると契約相手となる第三者などにも影響が及ぶため、任意後見の存在を登記制度によって公示する必要があるのです。
判断能力が低下すると家庭裁判所に申し立て
実際に判断能力が低下して任意後見を始める必要性が生じたときは、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てましょう。
この監督人が選任されないと契約の効力は生じません。
また、監督人とは任意後見の内容をチェックする人物のことです。任意後見人だけに任せて不正行為などが横行してしまうといけませんので、任意後見監督人を介して家庭裁判所が一定の関与をできる仕組みを設けているのです。
契約に基づく任意後見を始める
任意後見監督人が選任されて契約の効力が生じると、任意後見人もその契約内容に従い仕事を始めます。
また、不正を防ぐため、定期的な報告義務が課されています。任意後見監督人に対して財産目録や収支予定表などを提出して、現状を伝えなくてはなりません。また、委任者本人から報告を求められたときにも事務処理の内容を報告しないといけません。
発生する費用の大きさ
任意後見を始めるまでの各種手続には手数料などが発生しますし、任意後見を始めてからも費用負担が発生することがあります。
専門家の利用、契約内容、委任者が持つ財産の大きさなど状況により金額も異なりますが、主な費用は次のように整理できます。
任意後見を始めるまでの主な費用 |
|
公証役場に支払う手数料 |
11,000円 |
法務局へ納める印紙税 |
2,600円 |
法務局へ支払う登記嘱託量 |
1,400円 |
専門家への報酬 (依頼する場合に発生) |
10~30万円ほど ※依頼先や依頼範囲により異なる |
任意後見監督人の申立手数料 |
800円 |
後見登記の手数料 |
1,400円 |
郵便切手代 |
数千円 |
鑑定費用 (鑑定が必要な場合に発生) |
10~20万円ほど |
任意後見を始めてからの主な費用 |
|
任意後見人への報酬 |
契約内容による ※月々数万円程度が多い |
任意後見監督人への報酬 |
家庭裁判所の判断による ※月々1~3万円程度が多い |
子どもが成長する過程では、親からの愛情を感じることが重要と考えられています。しかし親が離婚をしてしまうと、一方の親と会う機会はほとんどなくなってしまいます。離婚をしても親であることに変わりはありませんし、子どもの福祉のために面会交流を実施するケースも多いのですが、この面会交流を行う場合は事前に条件をしっかりと決めておくべきです。
ここで、事前に取り決めておくべき面会交流の条件について紹介していますので、現在離婚を検討している・離婚手続を進めているという方はぜひ参考にしてください。
面会交流のルールを定めておくことの重要性
面会交流について細かくルールを決めておかなくても離婚はできます。子どものいる夫婦が離婚時に絶対決めないといけない事項は子どもの「親権」についてであって、「面会交流のやり方」については必須とされていません。
ただ、具体的なルールを定めておかないと後々トラブルが発生する危険性が高く、裁判所で調停までしないといけなくなるリスクも高まります。
大きなトラブルにまで至らなくても、あいまいなまま面会交流を続けているとちょっとした不満がたまり元配偶者との間で関係性がさらに悪くなることもあります。その雰囲気を子どもも感じ取り、ストレスを感じてしまうことも考えられます。
そのため、極力離婚時に面会交流についてもしっかりと話し合っておくことが望ましいのです。
面会交流に関して取り決めておくべき条件
面会交流に関しては、少なくとも①頻度、②方法、③場所については話し合っておくべきです。これらの条件、その他費用などの条件についても以下で確認していきましょう。
頻度
次の事柄についてよく話し合っておく必要があります。
l 夏休みや年末年始、ゴールデンウィークなどの長期休暇中の面会はどうするのか
l 誕生日やクリスマスなどの特別な日の面会はどうするのか
これら「面会交流の頻度」に関する取り決めはとても重要です。子どもに会いたい非監護親としてはできるだけ高頻度で実施したいものですが、その場合は親権を持つ親側に負担がかかります。
特定の日時に子どもを連れていかないといけない手間がかかりますし、元配偶者に会わないといけないことに対して精神的な負担を感じることもあるでしょう。
そこで面会交流の頻度を決めるときは、親の仕事のスケジュールや互いの住居の距離、離婚原因なども考慮しましょう。仕事が忙しかったり遠方に住んでいたりすると頻繁な面会は現実的ではなくなります。
また、離婚原因によっては元配偶者や子どもに大きな負荷をかけてしまうおそれがあります。特に子どもに負担がかかってしまうときは面会交流の頻度を少なくするだけではなく、面会交流を実施しない方向で話を進める必要があるでしょう。
例えば過去に虐待をしていた事実があるのなら、面会交流を実施すべきとはいえません。そもそも面会交流は親のためではなく子どものために実施するものですので、子どもにとって利益にならないどころか不利益をもたらす面会交流を実施する必要はありません。
方法
「面会交流の実施方法」もあらかじめ決めておくべきです。例えば次のような方法が挙げられます。
l ビデオ通話や電話などで交流する
l 非監護親と子どもだけで面会する
l 監護親も一緒に立ち会う
l 第三者も立ち会って面会する など
必ずしも1つの手段に絞る必要はありません。原則的な方法については決めておき、その方法による面会交流ができない場合の備えとしてオンラインでの交流なども視野に入れておくと良いかもしれません。
また、遠方に住んでいて何度も会いに行くのが難しい場合は、直接会う日とオンラインで交流する日を織り交ぜてみるのも良いかもしれません。決まった方法はありませんので、双方の都合、子どもの意見なども参考にしつつ、面会交流の方法を考えていくと良いでしょう。
なお、親子仲がとても良いとはいえない場合や子どもが会いたがらない場合には第三者を立ち会わせることも検討しましょう。
場所
「面会交流の実施場所」も決めておきましょう。例えば次のような場所を指定します。
l 公園
l ショッピングモール
l 監護親の自宅
l 非監護親の自宅 など
非監護親との関係性によっても定めるべき場所が変わってきます。例えば離婚に対して最後まで否定的であった相手方、親権について最後まで争った相手方である場合、連れ去りなどのリスクも考慮すべきです。子どもの安全を第一に考え、そのうえで親の都合よりも子どもにとって過ごしやすい場所を選ぶようにします。
また、子どもの趣味や性格、年齢なども考慮します。幼児であれば公園などの遊具がある場所で楽しく過ごせますが、外遊びが好きな子でなければ楽しく過ごせないかもしれませんし、ある程度年齢を重ねてくると公園よりショッピングモールや映画館、カフェなどの方が楽しく過ごせるようになってきます。
そこで親双方の意向に加え、子どもの意見も参考にしながら場所を決めていくと良いでしょう。
費用
「面会交流を実施するための費用」も争いが生まれることがありますので、事前によく話し合って取り決めておくことが大事です。例えば次のような費用です。
l 交通費
l 宿泊費
l 子どもの食費 など
なお、これら面会交流に伴う費用は基本的に非監護親が負担すべきものと考えられています。それぞれが支出したものに関しては支出した者が負担をするのが基本であり、必ずしも折半とする必要はありません。
ただしこれもケースバイケースです。子どもが非監護親に会いたがっていて面会交流を実施するのが子どもの福祉のためになるという前提が成り立つとき、非監護親に遠方へ来るだけの経済力がないのなら一部費用負担が認められる余地もあります。
とはいえ、いずれにしろまずは双方の合意に基づいて条件を決めていきますので、双方が納得すれば費用の負担についても自由に定めることは可能です。
その他考えておきたいポイント
その他にも、はじめに考えておきたい条件がいくつかあります。
例えば「子どもの受け渡しの方法」です。子どもがどうやって非監護親のもとに向かうのかを決めます。監護親が送っていくのか、子ども自身が向かうのか、第三者に送ってもらうのか、など細かいポイントですがしっかりと取り決めておきましょう。
「子どもの体調が悪い場合の対応」についても話し合います。体調が悪い中無理に会うのは避け、そのうえで面会交流の日程を振り替えるのかどうかを決めておくのです。
また、次の事項についても一度考えておきましょう。
l プレゼントを渡す行為(プレゼントのやり取りがきっかけで揉めることもあるため話し合っておく)
l ルール違反があったときの対応(面会交流を実施しないなど、ペナルティについても決めておく)
条件を決めるときの注意点
面会交流の条件を決めるときは、相手方の条件をそのまま受け入れるのではなく相場と比べたときの妥当性を評価すべきです。深く考えず同意してしまうことのないように注意しましょう。
また、定めた条件は書面に記しておくようにも注意します。「そんな条件は認めていない」などと後で主張されることを防ぐためです。
「上手く対応できるだろうか」と悩むこともあるかもしれませんが、そんなときは弁護士を頼ると良いです。話し合いをするときに揉めるのを回避しやすくなりますし、不利な条件を交わしてしまうリスクも下げられます。
今後条件変更等を申し入れたくなったときも弁護士を介して相手方と交渉をすることができます。その他さまざまな問題に対し、弁護士がついていると安心して取り組むことができますので、すこしでも有利な条件を求めるのであれば離婚問題・家族問題について取り扱い実績がある弁護士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。
判断能力が低下・喪失してしまうと単独で適切に法律行為をすることができなくなってしまい、生きるために必要なサービスを受けるときや資産の管理をするときに困ってしまいます。
そんな場面でも「後見人」が付いていればサポートをしてもらえます。後見人は成年後見制度に基づいて選任される人物で、利用パターンによって選任される後見人の種類は異なります。
ここで成年後見制度の種類と後見人の種類について解説しますので、認知症に対する不安を抱いている方や判断力に問題が出始めたという方は参考にしてください。
成年後見人
本人が判断能力を失っており、すでに単独で法律行為をすることが困難であるという場合、「後見の開始」を求めて家庭裁判所に申し立てを行います。
そしてこのとき裁判所から選任されるのが「成年後見人」です。
成年後見人は、保護対象となる成年被後見人についての広範な代理権を持つのが一番の特徴です。日用品の購入といった利害が小さい行為を除きすべての法律行為を代行することができ、他の後見人と比べてもできることの幅が広いです。
ただしその分責任も大きくなり、求められる知識・技量の水準も高くなります。また定期的に裁判所に事務報告をしなければならず、裁判所による監視も受け続けることとなります。
保佐人
本人の判断能力が、法的に“著しく不十分である”と評価されるときは、「保佐の開始」を求めて家庭裁判所に申し立てを行います。
そしてこのとき裁判所から選任されるのが「保佐人」です。
保佐人は、保護対象となる被保佐人のする一定の法律行為について同意権を持ちます。同意権とは、本人のする法律行為に対して了承をする権限のことです。そこで保佐人の同意が必要な行為に関して同意を得ずにしても、後で保佐人は本人のした行為を取り消すことができるのです。
なお、同意権の対象となる法律行為とは「預金の引き出し」「お金の貸し付け」「贈与契約」「自宅の購入」など、民法第13条第1項に定められた行為のことです。
※その他の行為に関して別途代理権付与の申し立てを行い、代理権を得ることも可能。
補助人
本人の判断能力が、法的に“不十分である”と評価されるときは、「補助の開始」を求めて家庭裁判所に申し立てを行います。
そしてこのとき裁判所から選任されるのが「補助人」です。
補助人は、保護対象となる被補助人のする行為について一部同意権や代理権を付けてもらうことで法律行為のサポートを行います。被補助人は成年被後見人や被保佐人とは異なり、ほとんどの行為を1人で問題なく行うことができます。そのため申し立てをした特定の行為に限って行為能力が制限され、補助開始の申し立てに関しても本人の同意が必要とされています。
任意後見人
上記3つの後見人は、法定後見と呼ばれる枠組みに入る後見人です。この法定後見とは性質が異なる「任意後見」と呼ばれる枠組みもあります。
任意後見はその名称の通り任意に開始できるものであって、後見開始や保佐開始のように本人の意思を考慮することなく始めることはできません。補助開始の申し立ても本人の同意は必要ですが、その他の人物が申し立てをすることは可能です。
一方で任意後見は本人と後見人になろうとする者が契約を交わす必要があり、本人による自主的・積極的な取り組みが求められます。
当事者間で取り交わす任意後見契約に従い、任意後見人のする仕事内容は定まります。法定後見のように法律でサポート内容が決められておらず、本人がして欲しいことをピンポイントで依頼することができるのです。
後見人の比較
成年後見制度とそれぞれで選任される後見人の種類は次のように整理できます。
l 法定後見
Ø 後見の場合・・・「成年後見人」が選任される
Ø 保佐の場合・・・「保佐人」が選任される
Ø 補助の場合・・・「補助人」が選任される
l 任意後見
Ø 契約に基づいて「任意後見人」を指定する
法定後見については上から順に後見人の権限が大きく、その分求められる仕事量や責任も大きくなります。とはいえ他の後見人の責任が軽いということでもありません。法律行為の意味を理解し、適切な判断を下し、本人の権利利益を保護しなくてはなりません。
必ずしも家族を指定する必要はありませんし、できるだけ法律上の知識や財産管理、資産運用についての知識が豊富である人物を選任してもらうことが重要といえます。適任といえる方が身近にいないときは弁護士などの実務家に対応を依頼することも検討しましょう。
相続人となる方には3つの選択肢があります。1つ目はそのまま相続を受け入れるという選択肢です。2つ目は清算手続を行い限定的に相続する選択肢。そして3つ目が一切相続をしないという選択肢です。
3つ目の選択肢は「相続放棄」と呼ばれ、多額の借金を残して亡くなった方についての相続でよく採用されています。相続によるリスクを回避するために重要な手続ですので、ここでそのやり方を押さえておきましょう。
「相続放棄」で借金の相続を回避できる
親や配偶者が借金をしていた場合、その債務者本人と近い関係にあるからといって返済義務を負わされることはありません。債権者から「支払え」と求められても応じる必要はなく、拒むことができます。
ただ、債務者が亡くなってその方を相続したときは、資産も負債もすべて承継することになります。借金が残っているときはその返済義務も引き継ぐこととなります。
そこで借金の相続を回避したいときは「相続放棄」を行いましょう。相続放棄をするとどうなるのか、このときの効果は民法に規定されています。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
相続放棄をすれば、相続開始時点に遡って「相続人にはならなかった」という扱いを受けます。
そのため「あなたは債務者の相続人だから借金を代わりに返しなさい」と求められても、相続放棄後はこの請求を拒むことができます。
相続放棄をすると資産も相続できなくなる
相続放棄をするときに注意すべきは、「借金の取得だけを回避することはできない」という点です。
選択的に財産の取得を放棄することはできないため、まるごと捨てるか、まるごと相続するかのどちらかしか道はありません。
もし「どうしても取得したい資産がある」という場面で相続放棄をしてしまうと、その資産を手にすることもできなくなってしまいます。そしていったん相続放棄をするとやり直しはききません。
そこで借金の有無だけに着目して相続放棄をすべきではなく、しっかりと遺産の調査を行わなければなりません。資産の割合の方が大きく、全体としてはプラスになるというときは相続放棄を無理にする必要はありません。
プラスになるかマイナスになるか、明確に判別できないというときは「限定承認」の手続も検討すると良いでしょう。
※限定承認とは、承継したプラスの財産の範囲でのみマイナスの財産の弁済義務を負うという手続。
相続放棄の方法
相続放棄をしようとするときは、上述の通り、まずは遺産の調査を行うべきです。
借金の存在やその大きさについて調べるのであれば、被相続人の自宅や口座の引き落とし履歴をチェックしてみましょう。借金に関する契約書が見つかることもあれば、毎月借金の返済として引き落とされている記録が見つかることもあります。
全銀協(一般社団法人全国銀行協会)やJICC、CICなどに問い合わせて調べられることもあります。
その他の財産についても調べて、相続放棄をすることを決意すれば、必要書類を集めて家庭裁判所で手続を進めていきます。
必要書類の準備
相続放棄をするには「相続放棄の申述書」を作成しないといけません。窓口で受け取るかWebからダウンロードして、必要事項を記入していきましょう。
被相続人の「住民票除票(もしくは戸籍附票)」も取得しておく必要があります。
また、相続放棄の申述人が相続人であることの証明も必要です。この手続に限らず、相続人であることを示すときは戸籍謄本等(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍のこと)を利用しますので、被相続人から見た関係性(相続人としての順位)に対応した戸籍謄本等を用意しておきましょう。
少なくとも「被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本等」は必要で、追加で次の戸籍謄本等が必要になることもあります。
l 子どもを代襲相続した孫
Ø 被代襲者についての死亡が記載された戸籍謄本等
l 親や祖父母
Ø 子どもが死亡しているときは、死亡した方の死亡から出生までの戸籍謄本等
Ø 祖父母の場合、被相続人の親が死亡したことについて記載された戸籍謄本等
l 兄弟姉妹
Ø 子どもや親が死亡しているときは、死亡した方の死亡から出生までの戸籍謄本等
Ø 代襲相続をした甥や姪の場合は、被代襲者の死亡が記載された戸籍謄本等
3ヶ月以内に家庭裁判所へ申立
申立書や添付書類の用意ができれば、家庭裁判所にこれらを提出して、相続放棄の申述を行います。
※手続を行う家庭裁判所は、亡くなった方の住所地が管轄である家庭裁判所。
家庭裁判所に提出するだけではまだ相続放棄は完了していません。その後裁判所から照会書が送られてきますので、そこへ必要な事項を記載し、返送。さらにその後相続放棄が受理されたことを示す「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。これをもって手続は完了となるのです。
なお、申述が認められる期限は「相続が始まった事実を認識したときから3ヶ月以内」です。期限に間に合わせられないと、多額の借金があってもそのまま取得しないといけなくなりますので要注意です。
※期限を過ぎる前に期間伸長を求める手続をしておけば、3ヶ月を経過しても相続放棄をできるケースがある。
債権者に対する通知
以上の手続を済ませることで借金を含む一切の相続財産を取得することはなくなり、債権者からの請求も無視できるようになります。
しかし余計なトラブル、揉め事を起こさないように、可能なら債権者に対して相続放棄をしたことについて通知することも検討しましょう。請求に対する返答として、相続放棄申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書を提示して「相続放棄をしました」と伝えると良いです。