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子どものために、離婚後も「面会交流」を実施して別居親が子どもと会うケースはよくあります。交流の頻度や実施方法などは法定されておらず、ある程度自由に定めることができます。しかし夫婦間で意見が揃わないときは裁判所で行う調停の手続によりその内容を取り決めることとなります。
調停委員の関与もあることから、単なる夫婦間の協議とは異なる注意点があります。ご自身にとって有利な結果とするためにはその注意点を踏まえて手続に臨むことが大事ですので、ここでそのポイントを紹介していきます。
面会交流の決め方について
面会交流について話し合うためには、面会交流の意義について理解しておく必要があります。まず押さえておきたいのは「面会交流は、子どものために実施するもの」であるという点です。子どもと会いたい親のために実施するものではありません。
突然両親と会えなくなった子どもに悪影響が及ぶ恐れがあり、精神的な安定を得るためにも面会交流は重要なものと捉えられています。
そのため、「自分にとって、子どもと会うことは非常に重要で価値のある行為だ」あるいは「自分にとって、離婚後も相手と子どもを会わせることは気が滅入るから嫌だ」などと主張することは本質からずれてしまっています。
面会交流とは何かを理解していれば、どのように主張すべきか、交渉をすべきかが見えてきます。
また、面会交流は原則として実施するものだということも知っておきましょう。特段の事情がない限り、面会交流は子どもの利益に資するものだと考えられていますので、面会交流を拒否したいとしても、その主張は簡単に実現できるものではありません。
夫婦間の協議で決める
調停で面会交流について取り決めることができますが、通常、いきなり調停を申し立てることはありません。まずは夫婦間の協議から始めます。特に窓口で何か手続をするなどの必要はなく、2人の間で面会交流を行うかどうか、どのように行うのかを決めるのです。
しかし面会交流について意見がまとまらないときは、調停の利用を検討することになります。
調停や審判で決める
裁判所を介して面会交流について話し合う場合、まずは調停を始めます。調停では調停委員が登場し、ご自身と相手方との間に立って話を聞いてくれます。調停委員は法律のプロであり、面会交流や離婚に関して豊富な経験と高度な知識を持ち合わせています。調停委員の見解を参考にすることで実現可能性の高い目標を見定められるようになりますし、一方が法的に無理のある主張をしているときでもその事実に気付くことができます。
基本的には次のような流れで手続は進みます。
1.
調停の申し立て
2.
第1回目の調停期日が開かれる
3.
必要に応じて出頭勧告や調査などが行われる
4.
第2回目以降の調停期日が開かれる
5. 調整の成立または不成立が決まる
調停が不成立となったときは、「審判」の手続へと移行します。審判では裁判所が判断を下すことになりますが、不服を申し立てることは可能です。
面会交流調停の注意点
面会交流調停で不利な結果に終わらないようにするため、次の点に注意しましょう。
l 調停委員に対して冷静に事情を伝えること
l 面会交流の実施方法は慎重に検討すること
l 子どもへの悪影響の有無を伝える
l 弁護士にも相談して対策を立てておくこと
それぞれについて詳しく説明していきます。
調停委員に対して冷静に事情を伝えること
調停では、相手方を説得することだけに執着するのではなく、調停委員に納得をしてもらうことも目指しましょう。
冷静になり、家庭の状況など、詳しい情報を調停委員に伝えることが重要です。その上で主張する内容の正当性、理由があることを理解してもらうよう努めます。感情的になり深い議論ができないと、ただわがままを言っている印象を持たれるおそれがあります。
面会交流の実施方法は慎重に検討すること
面会交流の実施方法等について、将来のことも想定して慎重に検討を進めましょう。
いったん取り決めを行うと、容易に変更することはできません。条件変更も不可能ではないのですが、相手方が同意しないときは再び調停を開くなど、大きな手間もかかります。
例えば「再婚をしたときどうするのか」についても考えておきましょう。子どもと同居する親が再婚をしたとしても、当然に面会交流は拒否できません。
子どもへの悪影響の有無を伝える
面会交流の実施自体を争うときは、「子どもの利益」や「子どもに与える影響」に着目することが大事です。上述の通り、親の個人的な感覚で主張を行うべきではなく、子ども目線で考える必要があります。
もし面会交流を行わせたくないと考えているのであれば、「面会交流の実施が子どもに悪影響を及ぼす」ことを示すことになります。例えば過去に相手方が虐待をしていたこと、子どもを連れ去ろうとしたことなど、何かしらの危険の存在をアピールすることが大事です。写真やその他の証拠でその事実が示せるとより有利に話を進めやすくなります。
逆に面会交流を拒絶されている別居親からすれば、そのような事実がないこと、子どもの利益のために必要であることを主張する必要があります。
弁護士にも相談して対策を立てておくこと
面会交流は法律も絡む問題です。また、離婚後も長期的に面会交流は実施されるものですので、納得のいかない結果になると長く不満を抱え続けることになってしまいます。できるだけ最初の取り決め段階で納得のいく結果を得ておくことが重要であり、そのためにも弁護士への相談・依頼が欠かせません。
離婚や養育費、面会交流に関することなど、家庭の問題に多く取り組んできた実績を持つ弁護士を探し、まずは相談をしてみましょう。
弁護士が直接相手方と交渉し、場合によっては調停や審判を行うことなく問題を解決できるかもしれません。「相手がまともに話し合ってくれず困っている」という場面でも、弁護士から連絡が来ることで本気であると伝わります。すぐに返答が得られ、円滑に話し合いが進められる可能性も高まります。