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2024.10.03

認知症となり判断能力が落ちてしまうと、法的なリスクが高まってしまいます。相続の場面でもスムーズに手続きが進められなくなり、また、思うように遺産を分けられなくなることもあります。
この問題は「被相続人(亡くなった方)が生前、認知症になるケース」「相続人(遺産を受け取る方)が認知症になるケース」のいずれにおいても起こり得るものであり、それぞれの立場から対策を取ることが求められます。
そこで当記事では、各ケースについての事前対策や相続開始後の対応を紹介していきます。 

被相続人が認知症になるケースについて

被相続人となる方は、事前に遺言書の作成をしておくなどいくつかの相続対策を講じておくことができます。これによって自分自身の意思を反映した遺産分割ができるようになりますし、残された相続人たちも揉めずに済みます。
しかしながらこの方が認知症になっていると、単独で有効な法律行為ができなくなり、生前の対策が上手く進められなくなってしまいます。 

放置した場合のリスク

認知症になった方をそのまま放置することで「適切な財産管理ができず将来の遺産が少なくなってしまう」というリスクが生じます。
認知症の進行により、被相続人となる本人が適切な判断をできなくなり、不用意に不動産を売却してしまったり不利な条件で賃貸借契約を結んでしまったり、最悪の場合悪意ある第三者により騙されて金銭を取られることも起こり得ます。
これは本人にとっても重大な問題であり、さらに家族など将来相続人となる方にも影響が及ぶ問題でもあります。 

認知症になる前にしておきたい対策

高齢になると認知症リスクが高まりますので、できるだけ相続対策も早めに進めておくことが大事といえます。そこで以下の対策を検討・実施することをご検討ください。

 

遺言書の作成

遺言書があれば、被相続人の意思を尊重した遺産分割がスムーズに行える。

判断能力に少しでも不安があるなら、遺言者1人で作成する「自筆証書遺言」ではなく「公正証書遺言」がおすすめ。法律のプロである公証人が作成手続きに関与するため、後で無効になる危険性が小さい。

任意後見契約の締結

将来、判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人に財産管理や身上監護を委託するための契約。判断能力が低下してから始める法定後見とは異なり、本人の意思を強く反映させられるという特徴を持つ。

家族信託の活用

成年後見制度とも近い性質を持つが、財産管理・資産運用に特化して他人に委託するときは家族信託が適している。複雑な取扱い、高度な運用ができるため、信託の仕組みを使って相続対策も取れる。

財産目録の作成

自分自身の財産状況を整理し、不動産・預貯金・株式などの財産の内容と金額を明確にしておけば相続人がスムーズに相続手続きを進められる。

生前贈与の検討

多くの財産を保有している場合は相続税の負担も大きくなる。相続税対策として有効な手段の一つが「生前贈与」であるが、有効な贈与契約を交わすには認知症になる前、契約の効果・意味を理解するだけの判断能力が必要。

 

認知症になってからの対応

認知症になってから(厳密には、特定の法律行為が有効にできなくなる程度に判断能力が下がってから)だと、本人にできることはかなり制限されます。例えば次のような行為は相続対策として一般によく行われていますが、認知症になることで無効になるリスクがかなり高くなるのです。 

l  不動産の修繕や売却

l  預金口座の解約や引き出し

l  生命保険への加入

l  子どもや孫などへの贈与

l  遺言書の作成

l  株式の売買 など

とはいえリスクの高い状態を放置すべきではありません。もし認知症と診断されていてもそれがかなり軽度であれば、遺言書も有効に作成できる可能性が残っています。そこで医師の診断に加え弁護士にも相談し、本人に遺言能力が残っているかどうかの評価をしてもらいましょう。もし可能なら、認知症がさらに進行してしまう前に、公正証書遺言を作成することも検討します。
ほかには、判断能力低下に起因した散財や詐欺被害に遭わないよう、法定後見制度の利用も考えてみましょう。裁判所が本人の状況に合わせて成年後見人や保佐人、補助人を付けてくれます。これら後見人等は本人の法律行為を支援し、場合によってはいったんした行為も取り消すことが可能となります。 

認知症の方が相続人になるケースについて

次に、相続人目線で認知症のリスクや必要な対応について説明します。 

相続手続きに関わる問題点

相続人が認知症の場合、以下の問題点が生じることがあります。 

l  遺産分割協議への参加が困難
→ 認知症の進行状況によっては遺産分割協議への参加が難しくなる。判断能力が不十分な状態で合意をしても無効となる危険性がある。

l  遺産分割で不利になる
→ 判断能力が低下していることを逆手に取って、他の相続人が自分に有利な遺産分割をしてしまう可能性もある。

l  相続財産の管理が困難
→ 認知症の方が相続によって大きな資産を手に入れたとしても、その後の管理が困難で、詐欺被害に遭ったり浪費してしまったりするリスクも考えられる。 

事前対策や相続開始後の対応

前項のような問題に対しては「法定後見制度の利用」により対処します。
家庭裁判所が選任した後見人等が遺産分割協議に参加し、本人を保護するために適切な意見を主張します。これにより本人の権利は守られ、また、遺産分割協議が無効になるリスクも排除できます。
また、可能であれば事前に対策を打っておきましょう。すでに認知症の方がおり、まだ相続が開始していないのなら、被相続人となる立場の方は「遺言書の作成」「家族信託を始める」「生命保険に加入する」などの対応をご検討ください。 

対応に困ったときは弁護士に相談

認知症は、本人だけでなく家族や周囲の人にも大きな影響を与える病気です。相続手続きも難航する可能性が高くなります。
そこで相続に関しての認知症対策を取りたい方、認知症を不安視している方は、弁護士にご相談ください。相続に強い弁護士が関わることで次のような利点が得られます。

l  遺言書の有効性や法律行為の有効性について専門的な見地から判断をしてもらえる

l  認知症の進行状況に応じた適切な相続対策を提案してもらえる

l  成年後見制度利用の申し立てなど必要な手続きをサポートしてもらえる

l  遺産分割協議をスムーズに進めるためのアドバイスや交渉をしてくれるなど

認知症はいつ発症するのかわかりませんし、いつ急速に進行するのかもわかりません。そこで早期の対応を心がけましょう。

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