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2024.08.29

相続人は、遺産に含まれるすべての財産を引き継ぎます。この財産には資産も負債も含まれており、プラスの価値があるものもあればマイナスの価値があるものもあります。そこで、借金が残っているときにはその支払いを肩代わりすることになってしまうのです。
しかしこれを回避する「相続放棄」という手段がありますし、相続によるリスクを抑える「限定承認」という手段もあります。借金を相続することになりそうな場合は、この2つの手段について知っておきましょう。

相続放棄をするとどうなる?

「相続放棄」は、相続人ではなくなるための手続です。
法律上も、相続人として相続を受け入れることが強制されるわけではありません。相続を放棄して一切の資産も負債も引き継がないという選択も可能なのです。
そこで相続放棄をすると、借金を肩代わりする必要はなくなります。被相続人がどれだけ大きな借入をしていたとしても、その責任を負わなくていいです。
ただ、預金や現金、不動産、株式などの財産も取得できなくなります。代々承継してきた土地や建物がある場合でも、都合良く特定の財産をもらい受けることはできません。

限定承認をするとどうなる?

「限定承認」は、限定的に相続を受け入れるときの手続です。
何の制限もなく相続を受け入れることを「単純承認」と呼ぶのですが、限定承認でも単純承認をしたとき同様にすべての財産を取得することになります。しかしながら、借金の支払い義務など、責任の部分を制限することができるのです。
「取得したプラスの財産」に相当する部分まで制限ができますので、相続によって大きな不利益を被るリスクが抑えられます。
※例:1,000万円の現金と1,500万円の借金を相続したとき、借金の返済義務を1,000万円までに限定できる。

相続放棄と限定承認の比較

借金が残っている場面では、相続放棄と限定承認のどちらを選択してもリスクを回避することができます。このように共通点もあれば相違点もあります。それぞれ利用が適している場面が異なりますし、両者の特徴をよく理解のうえ選択することが大事です。

 

相続放棄

限定承認

共通点

相続開始から3ヶ月以内の手続が必要

手続のやり直しができない

大きな借金が残っている場合のリスクが回避できる

相違点

一切の財産を取得しない

すべての財産を取得する

借金の返済義務を負わない

借金の返済義務が限定される

手続は相続人1人でできる

手続は相続人の全員で行う

 

どちらも3ヶ月以内の手続が必要

どちらを選択する場合でも、相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続をしないといけません。
手続は家庭裁判所(被相続人最後の住所地を管轄する家庭裁判所)で行い、申述書や添付書類等を準備して期間内に提出します。提出後、裁判所からの求めに応じて質問等に回答し、申述内容が受け入れられれば無事相続放棄または限定承認が認められます。

3ヶ月以内に手続を行わない場合は原則として単純承認をしたことになってしまいます。つまり、どれだけ大きな借金が残っている場合でも、相続人がその責任を制限なく負うこととなります。

手続の負担は限定承認の方が大きい

限定承認には次のメリットがあります。

l  想定以上に大きな借金が見つかっても対処できる

l  残したい相続財産を取得できる

そのため明らかに借金の方が大きな場合を除けば「限定承認を選択しておいた方がお得ではないか」と思われるかもしれません。
しかしながら、限定承認には手続の負担が大きいという特徴もあります。手続の負担は主に次の観点から説明ができます。

l  相続人の全員が限定承認をすることについて合意しないといけない

l  被相続人の財産について清算をしないといけない

リスクを抑えられる代わりに清算処理を相続人自身で行わないといけないのです。債権者に対する通知や弁済、必要に応じて財産の換価なども行います。

ただ、これらの手続を弁護士に任せてもかまいません。「手間をかけたくない」「債権者とのやり取りに不安を感じる」といった場合でも弁護士がついていれば安心して相続手続を進められるでしょう。

手続選択のポイント

そのまま単純承認をするのか、それとも限定承認や相続放棄を選択するのか、判断にあたって重要なポイントを整理すると次のようにまとめられます。

l  遺産調査により資産や負債が明らかになっているか

l  どうしても残したい財産はないか

l  相続人同士の意見を一致させられるか

l  手続に時間をかけられるか

もし遺産調査が十分に進んでいて明らかにプラスの財産の方が大きいのなら単純承認で問題ありません。逆に明らかにマイナスの財産の方が大きいのなら相続放棄も検討することになるでしょう。
ただ、どうしても残したい財産があるのなら限定承認を選ぶ必要がありますし、調査が十分ではないあるいは財産関係が複雑で不明瞭な部分も多く残っているのならやはり限定承認を選択することも考えます。

一方で、限定承認を選んだ方が良さそうな状況にあっても相続人間の合意がなければ限定承認はできません。手続に時間を取られなくない場合にも相続放棄を考えることになるでしょう。

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