豊島区南大塚にある【東京あかつき法律事務所】お気軽にご相談ください。

CONTENTS

記事一覧

2024.07.26

日本人の平均寿命は徐々に延びていますが、その年まで判断能力を維持できている方ばかりではありません。認知症により1人で判断することが困難になっている方も少なくありません。

「気付けば判断能力が低下していた」というケースも珍しくなく、自覚する前から対策を採ることが重要といえます。そこで任意後見制度の利用を検討してみましょう。当記事でも手続の方法・流れ・費用についてまとめています。

任意後見制度の概要

任意後見制度は「成年後見制度」の1種です。

判断能力が衰えた本人の法律行為をサポートするための仕組みが成年後見制度であり、その制度の利用にあたって“本人が前もって契約締結をして備えるタイプ”が任意後見です。

任意後見とは別に、“本人の判断能力が衰えてしまったため裁判所に申し立てて始めるタイプ”が法定後見です。

任意後見では本人が主導して契約内容(サポート内容)を考えていくことになりますが、他方の法定後見では法律により定められている枠組みを活用することになります。 

任意後見を始めるための手続

任意後見を始めるには、支援内容を契約書にまとめなくてはなりません。公証役場で公正証書を作成し、登記をしてもらい、その後家庭裁判所への申し立ても必須です。以下に掲げる手順で手続を進めていきましょう。

任意後見人になってもらう人物の検討

契約に定めた法律行為を本人に代わって行う「任意後見人」との契約が必要です。

※この時点では「任意後見受任者」と呼ばれる。任意後見が始まってから「任意後見人」と呼ばれる。

そこでまずは信頼できる方を見定めて、任意後見人になってもらえないかと依頼をしましょう。以下に掲げる者に該当すると後見人にはなれませんが、基本的に自由な人選が可能です。

l  18歳未満(未成年)の方
l  以前に後見人から解任された経歴がある方
l  破産手続中の方
l  以前に訴訟トラブルになったことがある方


ただし任意後見人には大事な財産の管理などを任せることになりますので、①横領などの心配の有無、②財産管理や法律行為についての知識・経験の有無、の2点は要チェックです。大きな権限を預けることとなりますので、経済力や特別な業務経験など、さまざまな観点から評価を行いましょう。

支援内容の検討

続いて任意後見受任者と任意後見の内容を考えていきます。あくまで契約ですので本人の一存で支援内容を決めることはできません。両者の合意があって初めてその契約は機能します。

そこで相手方の意見も取り入れながら、「身上監護」「財産管理」についてのサポート方法などを具体化していきます。

身上監護
生活を維持するための契約行為などの支援。
介護が必要になった場合のケア計画を策定して、どのような生活を希望するのか、どのような医療・介護を希望するのかを定めていく。

財産管理
現金や預貯金の取り扱い方法、土地や建物、株式などの管理方法なども定めていく。売却や賃貸に出すかどうかに関しても検討する。

また、任意後見人に対する報酬の有無や金額についても考えておきましょう。何も定めを置かなければ無償ということになりますが、任意後見人による不正の防止やモチベーション維持の観点も含めてよく考えることが大事です。

公正証書の作成と登記

任意後見は、一般的な契約とは異なり、当事者間の合意をもって即座に効力を生じさせることはできません。

少なくとも契約内容を公正証書に残さないといけません。そこで当事者間で定めた契約内容を公証人に伝えて、任意後見契約の公正証書を作成してもらいましょう。手続は公証役場で行いますので、事前にアポを取っておく必要があります。

公正証書の作成が済めば、公証人が登記手続を進めてくれます。後見が開始されると契約相手となる第三者などにも影響が及ぶため、任意後見の存在を登記制度によって公示する必要があるのです。

判断能力が低下すると家庭裁判所に申し立て

実際に判断能力が低下して任意後見を始める必要性が生じたときは、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てましょう。

この監督人が選任されないと契約の効力は生じません。

また、監督人とは任意後見の内容をチェックする人物のことです。任意後見人だけに任せて不正行為などが横行してしまうといけませんので、任意後見監督人を介して家庭裁判所が一定の関与をできる仕組みを設けているのです。

契約に基づく任意後見を始める

任意後見監督人が選任されて契約の効力が生じると、任意後見人もその契約内容に従い仕事を始めます。

また、不正を防ぐため、定期的な報告義務が課されています。任意後見監督人に対して財産目録や収支予定表などを提出して、現状を伝えなくてはなりません。また、委任者本人から報告を求められたときにも事務処理の内容を報告しないといけません。

発生する費用の大きさ

任意後見を始めるまでの各種手続には手数料などが発生しますし、任意後見を始めてからも費用負担が発生することがあります。

専門家の利用、契約内容、委任者が持つ財産の大きさなど状況により金額も異なりますが、主な費用は次のように整理できます。

 

任意後見を始めるまでの主な費用

公証役場に支払う手数料

11,000

法務局へ納める印紙税

2,600

法務局へ支払う登記嘱託量

1,400

専門家への報酬

(依頼する場合に発生)

1030万円ほど

※依頼先や依頼範囲により異なる

任意後見監督人の申立手数料

800

後見登記の手数料

1,400

郵便切手代

数千円

鑑定費用

(鑑定が必要な場合に発生)

1020万円ほど

任意後見を始めてからの主な費用

任意後見人への報酬

契約内容による

※月々数万円程度が多い

任意後見監督人への報酬

家庭裁判所の判断による

※月々13万円程度が多い

 

一覧へ戻る
このページの先頭へ