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判断力が鈍ると、浪費をしてしまったり重要な財産を処分してしまったりして自分自身の財産を守ることが難しくなってしまいます。そこで判断能力が不十分になった方向けに成年後見制度が用意されています。
ここで基本的な手続の種類と流れ、そして制度を利用するときに発生する費用の大きさについても解説していきますので、今後成年後見制度の利用を考えている方は参考にしていただければと思います。
成年後見を始めるための準備
まずは成年後見制度が何なのかを理解しておく必要があるでしょう。
制度の利用で何が解決できるのか、ご自身の置かれている状況において利用が適しているのか、どうやって利用を開始できるのか、費用はどれほどかかるのか、様々な疑問点があるかと思われます。
成年後見制度は、判断能力が不十分になった本人を法的に保護することができる反面、その本人の権限を制限する効果も生じます。将来に渡って継続的に利用する手続ですし、慎重な判断が求められます。
できれば法律に強い専門家の力も借りて不明点を解消していくべきです。法的な問題について広く対処できる弁護士から、登記に強い司法書士など、いくつか選択肢はあります。その中でも成年後見制度を支援した実績のあるプロを探し出すようにしましょう。
専門家への相談費用
専門家に質問をするとき、通常は相談費用がかかります。料金体系は法律事務所や司法書士事務所など、依頼先によって異なりますが、「30分あたり5,000円」「1時間あたり1万円」などと時間制で定めている例が多いです。
また、「初回相談無料」としていることもありますし、相談だけでなくその後の手続も依頼することが決まっていれば、相談については別途費用が不要になることもあります。
任意後見制度を利用するケース
制度について調べていくと「任意後見」と「法定後見」があることに気が付くでしょう。簡単に区別すると、事前の備えとして利用できるのが任意後見、事後対応として利用できるのが法定後見と説明できます。現状、判断能力に問題がないのであれば、任意後見の準備を進めておくことをおすすめします。
手続の流れ
任意後見では、財産管理や身上監護をしてほしいと考える本人と、その事務に対応する任意後見受任者が契約を締結する必要があります。そのため、その時点において本人に任意後見契約を締結するだけの判断能力は残っていないと利用はできません。
また、契約当事者となる相手方、任意後見受任者も探さなくてはなりません。次の点に着目して人を選びましょう。
l 法律上の欠格事由にあてはまらないこと
例)未成年者、破産者、本人と訴訟トラブルを起こした者など
l 利害関係の対立がないこと
例)介護・看護のサービスについて契約を交わした事業者など
l 経済力があり面倒見も良いこと
候補者が選定できれば契約内容を検討します。何をしてほしいのかよく考え、契約書を作成していきます。また、任意後見を始めるには契約書を公正証書として作らなければなりません。そこで、公証役場で作成手続を進める必要があります。
その後後見を始めるべきタイミングになれば、家庭裁判所に対して「任意後見監督人の選任」の申立てを行います。任意後見人とは別に任意後見監督人が必要ですので、この申立てを受けて監督人が選任されれば、そこからようやく後見が開始となります。
公正証書の作成と裁判所への申立て費用が必要
契約書の作成をするとき、費用が必要です。「公正証書作成手数料11,000円」が必ず必要となります。また、「収入印紙2,600円」や「登記手数料1,400円」も必要です。
また、任意後見監督人の選任について申立てをするときに「申立手数料800円」「登記手数料1,400円」も発生します。裁判所の求めに応じて「鑑定費用」が発生することもあります。鑑定が必要になる場合は数万円~10万円ほど負担が増えてしまいます。
これらに加え、申立てのときに提出する書類を発行するのにも費用がかかります。数百円程度で足りるものが多いものの、多数集めることになれば数千円~1万円以上が必要になる場合もあります。
任意後見人と任意後見監督人への報酬を支払う
成年後見制度を利用するときの費用を考えるとき、「後見人等に対する報酬」について忘れてはいけません。申立て等の手続で支払う費用は最初だけですので大きな問題ではありませんが、報酬が発生するときはその後後見対象となる方が亡くなるまで続きます。
※法律上、報酬の支払いが必須ということではない。後見人等の同意があれば無償にもできる。
その費用についても予算に組み入れて、計画的に制度の利用をする必要があるでしょう。
任意後見人については「ひと月当たり2,3万円」程度になることが多いです。ただし、任意後見契約で取り決めた事務内容の範囲が広いほど、事務の難易度が高いほど、月々の報酬額も大きく設定されます。毎月5万円、それ以上になることもあります。
また、任意後見においては任意後見監督人が必ず選任されますので、この監督人に対しても報酬が発生します。とはいえほとんどの仕事は任意後見人が実施し、監督人はそのチェックをするのが役割ですので、報酬額は任意後見人より安くなる傾向にあります。そこで「ひと月当たり1万円」程度になることも多いです。
法定後見制度を利用するケース
契約を有効に交わすことができないときは、法定後見の開始に向けて手続を進めましょう。法定後見の場合は支援対象になる本人のご家族などが申立てすることが可能です。ただし次のように法定後見には種類があり、それぞれ後見の内容と申立ての条件が異なりますので注意が必要です。
成年後見 |
|
保佐 |
・本人の判断能力が著しく不十分 |
補助 |
・本人の判断能力が不十分 |
手続の流れ
制度を利用するために本人が契約を交わす必要はありません。必要に応じて医師の診てもらい、必要書類を備えて家庭裁判所に提出すれば良いのです。
裁判所がその資料に目を通し、また、本人やそのご家族等と面談をするなどして後見等の開始をすべきかどうかを判断します。
裁判所への申立て費用が必要
契約の締結が不要である以上、任意後見で必要とされていた契約書作成にかかる各種手数料は不要となります。
ただし家庭裁判所への申立ては必要ですので、「申立手数料800円」「登記手数料1,400円」は任意後見のときと同様に発生します。また、鑑定が求められると別途数万円~10万円ほど負担が増えるのも同じです。
※代理権付与、同意権付与をさらに行うときはさらに審判申立手数料800円が必要になる。
成年後見人・保佐人・補助人への報酬を支払う
成年後見人や保佐人、補助人に対しても報酬の支払いが発生します。任意後見人と大差はなく、「ひと月当たり数万円」程度が相場とされています。
報酬額は仕事量の大きさに対応することから、成年後見人>保佐人>補助人の順に報酬額も大きくなると考えられます。ただし、裁判所は本人の経済力等も考慮して金額を決めますので、具体的な金額はケースバイケースであるといえます。