豊島区南大塚にある【東京あかつき法律事務所】お気軽にご相談ください。

CONTENTS

記事一覧

2022.11.08

「公正証書遺言」とは遺言書の1種です。自分だけで作成できる「自筆証書遺言」とは異なり、公証役場で作成手続を進めなければなりませんし、手間や費用もかかります。

しかし公正証書遺言ならではの良さもあります。具体的にどのようなことができるのか、遺言書が一般的に有する効力も含め、公正証書遺言の効力についてここで解説していきます。


公正証書遺言の効力について


公正証書遺言には、公正証書であることに由来する効力や、遺言書一般に共通する効力などがあります。それらを以下にまとめました。


【私文書より高い証拠力を持つ】

遺言は、権利義務関係を生む、私人間の法律行為です。

契約を交わすとき同様、書面(私文書)を作成することで、取り決めた内容を客観的に示すことができるようになります。

しかし、書面があれば常にその内容が真実であるとみなされるわけではありません。

書面に記載されている内容が正確であるかどうかは別の問題ですし、信頼性を欠く書面であると評価されると証拠として十分に効力を発揮しません。

一方で、公正証書の場合には公証人と呼ばれる法律のプロが作成する書面(公文書)です。

私人間の法律行為についての陳述を受け、公証人が書面に記載をしていくことになります。そのため私文書と比べると高い証拠力を持つと評価できます。

遺言書の場合特にこの点が大きな意味を持ちます。

遺言書が効力を発揮するのは遺言者が亡くなってからですので、「本当に本人が作成した文書なのか」「作成時点で本人に遺言能力(十分な理解力等のこと)があったのか」の確認を直接行うことはできません。

これらにつき相続人等が争うことになれば、せっかく作成した遺言書も意味をなさなくなるおそれが出てきます。

そこで公文書として作成される公正証書遺言が役に立つのです。

公正証書遺言では、作成にあたり公証人が本人確認も行いますし、遺言能力の有無に関しても確認がなされます。遺言書に記載する事項につき意味を理解できているかどうか、これらもチェックされます。

こういった理由などから、私文書に比べて公正証書遺言には高い証拠力が認められているのです。

特に、相続をめぐって争いが起こりそうな場合には、これを防止するために公正証書遺言を作成しておくと良いでしょう。


【相続財産に関する指定ができる】

公正証書遺言も自筆証書遺言同様、相続財産に関する指定をすることができます。

何ら指定をしなくても、法律上規定されている法定相続分に従った遺産の分配、あるいは共同相続人間の協議を通して好きに分配していくことは可能です。

しかし遺言書に「相続分の指定」をすることで、各相続人の取得分につき一定の縛りを課すこともできます。

共同相続人全員の意見が揃えば遺言書の内容に従わない遺産分割も可能ですが、そうでない場合には遺言書の内容に拘束されますので、大きな効力を持つこととなります。

また、「遺産分割の禁止」を強制することも遺言書により可能です。

相続開始から5年を超えない期間に限られますが、その間に限り遺産分割を禁止できます。

例えば相続開始直後の協議だと揉める可能性が高いと想定される場合などに、相続人らが冷静になるための期間として一定期間遺産分割を禁止するとのルールを設けるケースがあります。


【相続権に関する指定ができる】

遺言書への記載により、相続権に関する効力を生じさせることも可能です。

例えば「相続人の廃除」「子の認知」などを遺言書を使って行うことができます。

相続人の廃除とは、本来相続人となるはずの人物につき相続権を剥奪することを意味します。過去に当該人物から虐待を受けていたり著しい非行をはたらいていたり、特別な事情がある場合には遺言者が廃除をすることが認められています。

認知をした場合には、婚姻外(結婚していない状態)で生まれた子に対しても相続権が与えられます。いわゆる“隠し子”に対して遺産を渡してあげたいと考える場合には、遺言書を使って認知をすることが有効です。


【遺言執行者や後見人等の指定ができる】

相続人が多く財産関係も複雑であるなど、相続手続が大変と考えられる場合には「遺言執行者」を指定することがあります。

報酬も発生しますが、遺言書に記載した内容の実現を職務とする遺言執行者がいれば、相続人らの負担を軽減することができます。

またこれとは別に、後見人等の指定を遺言書で行うことも可能です。

例えば未成年の子がいる場合、親権者がいなくなることによるリスクを避けるため、第三者を「未成年後見人」として指定することがあります。信頼できる人物にお願いをし、子の財産管理等を委ねるのです。

未成年後見人に指定できるのは親族に限られません。弁護士など、後見制度に精通している専門家に依頼することも可能です。


【遺留分侵害額請求を妨げることはできない】

遺言書をもってしても、遺留分制度に背くことはできません。

家族等の生活保障などの観点から日本では遺留分制度が設けられています。最低限の財産については、一定の相続人には確保する権利が認められていて、それを侵害する形で遺言書が作成されていたとしても「遺留分侵害額請求」を行うことにより財産を回収することができるようになっているのです。

これは公正証書遺言であっても同じです。

「公文書として作成した遺言書だから遺留分の影響を受けない」ということもありません。

そこで公正証書遺言であろうと、後々トラブルが起こらないよう遺留分にも配慮した遺産分割の指定を行うことが大切です。


【検認手続が不要になる】

自筆証書遺言の場合、相続開始後、遺言書は家庭裁判所に持っていき「検認手続」を行わなければなりません。その時点における遺言書の内容を保全し、改ざん等のリスクを排除するために行われます。

これに対し公正証書遺言では検認手続は不要です。

公証役場で原本が保管されていますので、そもそも改ざん等のリスクもありませんし、紛失も起こらないからです。


【公正証書遺言の効力に有効期限はない】

公正証書遺言を使えば上記のような効力を発揮することができます。

有効期限もありません。時効のようなルールは適用されないため、いったん有効に作成された遺言書は破棄・変更をしない限り有効なままです。

なお、保管に関しては期間の概念があります。

公正証書一般に対して、次の規定が適用されます。


  第二十七条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。

  一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年

                               :

  3 第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。

  (引用:e-Gov法令検索 公証人法施行規則第27条 第1項第1号・第3項


公証人法施行規則第27条第1項第1号の規定に従えば20年間が保管期間ということになるのですが、同条第3項によれば“特別の事由”があればその間保存をするとあります。

公正証書遺言の保管はこの“特別の事由”にあたると解釈されており、20年に限定されず、公証役場が半永久的あるいは遺言者の生後120年までの間保存をしてくれます。


公正証書遺言が無効になるケース  


公正証書遺言を作成したとしても、これが無効になってしまうケースがあります。

例えば「遺言者に遺言能力がなかった」「公正証書遺言の作成にあたり口授を欠いていた」「遺言内容が公序良俗に反していた」「証人が未成年者・推定相続人・受贈者であるなど不適格者であった」「遺言書の作成が詐欺や強迫に基づいていた」といったケースなどです。

公証人が作成に関与するためこういった問題が起こる可能性は低いと考えられますが、万が一これらに該当したときには無効になり得ることは理解しておきましょう。


一覧へ戻る
このページの先頭へ