記事一覧
離婚後、親権者となった親は子どもを監護することになり、子どもと一緒に生活します。一方、非親権者となった親は面会交流を通して子どもとの時間を過ごすことになります。
面会交流は子どもの成長、子どもの福祉のために重要です。そのため非親権者が面会交流を求めたときは、実施する方向でその方法等を決めていくことになります。
面会交流を始める方法にはいくつかパターンがあり、以下に示す流れに沿って確定させることになります。
面会交流は夫婦間の「協議」が基本
面会交流に関する取り決めは、離婚協議の際に同時に行うのが通常です。
ただ、親権者の定めは必須とされるのに対し、面会交流についてのルールを定めることが離婚の要件とはされていません。そのため面会交流について夫婦間で“協議をしないといけない”ということではありません。離婚後に話し合って決めることも可能です。
しかしながら、離婚後の話し合いがスムーズに進むとは限りませんし、できるだけ離婚前にしっかりと協議しておくことが望ましいです。
協議の進め方や決め方についての規制もありません。夫婦間で自由に話し合って決めれば良いのです。
【面会交流に関して話し合うべき事項】
自由に面会交流について話し合えば良いのですが、基本的には以下の事項を決めていくことになります。離婚後のトラブルを防ぐためにも次の基本事項は押さえておきましょう。
①面会交流を実施する日時、頻度
・「第〇日曜の10時から12時まで」と、面会交流を実施する日時を明確に定める
・具体的に定めることで面会交流の実行性が高まる
・具体的に決めるのが難しい場合、「月に2回」「3ヶ月に1回」などと実施頻度を指定しても良い
②面会交流1回あたりの時間
・1回の面会交流で何時間一緒に過ごすのかを定める
・午前中だけ、午後だけ、あるいは1日中、可能なら具体的な時間帯を指定して定める
・子どもの年齢なども考慮して検討する必要がある
③面会交流の場所
・そこで別居親と子どもが過ごすのかを定める
・別居親の自宅、公園、その他公共の場所、子どもの年齢も考慮して決めることが大事
④子どもの引渡し方法
・子どもが1人で出歩けるのかどうかによっても異なる
・子どもが1人で待ち合わせ場所に行けない場合は、どうやって連れていくのかも考えておく
・両親の仲が悪い場合、FPIC(公益社団法人家庭問題情報センター)などの面会交流支援事業を行っている団体に相談し、付き添いを頼むのも検討する
⑤面会以外の交流方法
・直接面会するのが難しい場合に備え、他の手段も検討する
・会えない事情があるときはビデオ通話により交流をする、など
・互いの住まいが遠く毎回長距離を移動するのが大変な場合には、直接面会する方法とビデオ通話を交互に行うことを基本とするやり方もある
【面会交流に関するルールを書面にまとめる】
上に挙げた事項などを話し合って決めた後は、その内容を書面にまとめていきましょう。
面会交流について約束をしたことの証拠を残すためです。
より安全に書面化するには、“弁護士に書面を作成してもらう”ことと、“公正証書として書面作成する”方法があります。
弁護士に依頼することで、確かにその人物が同意したという真正性を確保しやすくなります。さらに、公正証書にすると原本が公証役場に保管されるため、改ざんや紛失などのリスクもなくすことができます。
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」で、母子世帯の面会交流の取り決め状況のデータが示されています。
内容を確認してみると、面会交流に関する取り決めを行った世帯のうち、約7割が「文書あり」、約3割が「文書なし」であることがわかります。また文書を作成した世帯のうち5割弱が「判決、調停、審判などの裁判所における取決め、強制執行認諾条項付きの公正証書」による文書であることも示されています。
夫婦間で決められないなら「面会交流調停」
「夫婦間の仲が悪く話し合いが進められない」「納得できない事項がある」という場合には面会交流調停の申立を検討します。
調停でも最終的な結論を出すには当事者間の同意に基づかないといけません。しかし調停を利用した話し合いでは、両親のほかに調停委員も参加します。専門家の意見も取り入れつつ話が進められ、また、対面しない方法で意見のすり合わせができるなど、落ち着いた話合いが行いやすくなるというメリットもあります。
【家庭裁判所への申立が必要】
調停を行うには、家庭裁判所に対して申立を行わなければなりません。
申立先は、相手方の住所にある家庭裁判所(または合意で定めた家庭裁判所があるならその裁判所)です。
連絡用の郵便切手代と、子ども1人あたり収入印紙1,200円を申立費用として納める必要があります。
その他準備すべき書類として、調停についての「申立書」とその写しを1通、さらに子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)が必要です。
【数ヶ月以上の期間をかけて調停成立を目指す】
調停の場合、問題が解決するまでに数ヶ月を要することが多いです。
月に1回ほどの頻度で開かれる調停を、3,4回は繰り返すケースが多いからです。申立をしてから初回の調停期日までも1,2ヶ月を要します。対立が激しい場合にはより長期間かかってしまうでしょう。
なお、調停の期日では父母がそれぞれ別の部屋に待機し、交代に調停委員と話すこともあります。特に対面により一方に危険が及ぶ場合や萎縮してしまう場合などには、こういった配慮がなされます。
最終的には「審判手続」で裁判官が判断する
調停でも決着がつかない場合、最終的に審判手続に移行し、裁判官による判断で面会交流に関する事項が決まります。
別途申立の手続を行う必要はなく、調停が不成立になれば自動的に手続が移行します。
なお、無理に調停を先に行う必要はなく、調停での解決が到底できないと思われる場合にはいきなり審判手続を申し立てることも可能です。
【不服がある場合は高等裁判所で審理を行う】
審判手続の終結に当事者の合意は不要ですが、審理の結果に不服がある場合、“審判結果の告知を受けた日から2週間以内”であれば再度の審理を求めることができます。これを「即時抗告」といいます。
即時抗告があると、続く審理は高等裁判所で行われることになります。ただし常に即時抗告が受け入れられるわけではなく、棄却されることもありますので要注意です。