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2023.07.25

遺言書を作成すれば、遺産を誰にどのように渡すのかを指定することができます。そしてその実効性を高め、効率的な遺贈手続を実現する方法に「遺言執行者の選任」があります。

遺言執行者を選任するとどうなるのか、具体的にどのような仕事をしてくれるのでしょうか。

この記事ではまず「遺言の執行とは何か」について説明した後、遺言執行者の役割、選任することのメリット・デメリットについても解説していきます。


遺言執行とは


遺言執行とは、遺言者が亡くなった後、作成された遺言書の内容に沿って遺贈や遺産分割などの手続を行うことを指します。

遺言の執行は相続人などが行うこともできますが、遺言の執行を仕事とする人物として「遺言執行者」を定めることもできます。


遺言執行者の仕事内容


遺言執行者に関しては民法に規定が置かれていますが、一つひとつの仕事内容が事細かに法定されているわけではありません。

例えば遺言執行者の権利義務として、民法第1012条第1項に「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と定められています。抽象的に、遺言内容の実現のために必要な広範な権利および義務が与えられていることがわかります。

その上で続く第2項にて、「遺言執行者がいるとき、遺贈の履行は遺言執行者のみができる」とも規定されており、その他相続人等による遺言の執行権限を排斥しています。

(引用:e-Gov法令検索 民法


【遺言内容の相続人への通知】

遺言執行者がしないといけない具体的な行為・仕事を挙げていきます。

まずは「遺言内容を相続人に通知する」ことが必要です。


 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

 2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 民法第1007条


遺言執行者としての指定を受け、それを受け入れたなら、すぐに任務遂行に取り組まないといけません。そして任務の開始をしたなら、遺言書に記載されている内容を相続人に通知すべきことが民法で法定されています。

相続人としては、遺言内容を知らされないまま遺言執行者と名乗る人物が遺産に着手しだしたのでは不安に思うことでしょう。そこで通常は、“遺言執行者として指定されたことの知らせ”および“遺言書の写しの送付”を行います。


【遺産の調査と現状把握】

遺言執行者は、遺贈などを行うことになりますが、そのためには遺産の調査をしなければなりません。「特定遺贈」として遺贈する財産が具体的に特定されていることもあれば、「包括遺贈」として割合で指定されていることもあるでしょう。

いずれにしろ、遺贈の対象となる財産の存在が把握できなければなりません。

そこで遺産を調査し、現状の把握に努めます。

不動産や現金、預貯金、動産などを探し出し、その価額についても評価していきます。必要に応じて専門家の力も借りることになるでしょう。


【財産目録の作成と相続人への交付】

民法の規定に従い、遺産の調査後は、財産目録を作成します。


 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。

引用:e-Gov法令検索 民法第1011条第1項


どんな財産が残っているのかがわかるように情報を記載し、評価額についても記載します。遺言執行者の選任がない場合でも、相続人が遺産を調査したときは財産目録を作成することが推奨されます。

他方、遺言執行者に関してはこの作成が法的義務であることに留意しなければなりません。財産目録の相続人への交付についても義務です。


【債務の弁済】

遺産に含まれる財産はプラスの価値を持つものばかりとは限りません。借金など、債務が残っていることもあるでしょう。

そこで、遺言執行者が債務の弁済などの手続を行うこともあります。

「清算型遺贈」と表現されることもあり、遺産の全部または一部を売却し、債務を弁済。その上で残った金銭を相続・遺贈するといった遺言のことを指します。

清算型遺贈が利用されるのは、「債務超過には至らないものの多額の債務が残っているケース」などです。債務の弁済に関して相続人に余計な手間をかけさせないよう、遺言執行者に任せます。


【遺言内容の実行】

遺産の調査や債務の清算なども済めば、遺言内容に従い、所定の行為を実行していきます。

遺贈を行う場合、財産を特定の人物に渡していきます。

対象物が不動産である場合には、法務局に申請をして登記の移転なども手続も行い、預貯金なども、払戻しなどの手続をして、受遺者に引き渡します。

遺言内容は、財産の移転ばかりとは限りません。

例えば子に対する「認知」も遺言により行うことができます。

「認知」とは婚姻関係になかった男女から生まれた子どもに対して、法的に自分の子どもであることを認める法律行為を意味します。その際の手続を遺言執行者が行うことになります。

また、推定相続人の「廃除」も遺言により行うことができます。

「廃除」とは相続人になる予定の人物から相続権を奪う行為のことです。推定相続人から虐待を受けていたり、重大な侮辱を受けていたりしたときは、そのことを理由に廃除をすることが可能です。ただしその意思表示をするだけでは不十分で、家庭裁判所で所定の手続を行わなければなりません。その作業を遺言執行者が担います。


遺言執行者を選任するメリット


遺言執行者を選任することには、次の通りいくつかのメリットがあります。


・遺言者の希望を叶えられる

 遺言執行者を通じて、遺言者が残した最後の意思を現実に反映させることがでます。遺言執行者がいなくても実現させることは可能ですが、遺言執行者がいることでその実効性を高めることができます。

・遺贈手続が効率的に進められる

 遺言執行者が遺産の調査から管理、分割、移転などにかかる作業を一手に引き受けることで、効率化な遺言執行が期待できます。

・相続人間のトラブルが防ぎやすい

 相続人という遺産に直接の利害関係を持つ人物が携わるより、遺言執行者が手続を行ったほうが、相続人同士の争いやトラブルも防ぎやすいです。また、公平な遺言執行が期待できます。

 

遺言執行者を選任するデメリット


遺言執行者を選任することには前項に挙げた種々のメリットが得られる反面、遺言執行者に対する報酬が発生するというデメリットも生じます。

遺産の一定割合が報酬として設定されることがあり、その分受遺者や相続人の取得分が減ることになります。

また、遺言執行者が遺言の執行を担うことで相続人同士が揉めるのは防ぎやすくなりますが、遺言執行者と相続人の間でトラブルが生じる可能性もあります。特に遺言執行者として選任された人物が相続人から信頼されていないと、「不正に遺産に手をかけていないだろうか」などと疑いをかけられるリスクがあります。


遺言執行者の選び方に注意


遺言執行者を選任しておけば遺贈などの遺言執行の実効性が高まり、遺言者の意思を実現しやすくなります。

ただ、相続人から不信感を持たれている人物、その他遺産に対して何らの利害関係を持つ人物が選ばれていると、遺言執行者がトラブルの原因になってしまいます。

そこで推奨されるのが、弁護士等の専門家を遺言執行者として指定することです。中立な立場ですし、適切な遺言執行が期待できます。また、相続に関してのアドバイスを受けることができるなどの利点もあります。

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