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2023.09.26

建物や土地などの不動産も遺産相続の対象です。亡くなった方を被相続人とする相続が開始されると、その方が生前持っていた自宅、宅地、賃貸アパート、マンション、空き地などは相続人が取得できます。

ただし相続手続の一部には期限の定めが設けられていますので、一定期間内に適切に手続を済ませることが大事です。当記事でその流れと期限を説明していきますのでぜひ参考にしてください。


不動産相続までの手続と期限


相続人の場合、「特別な手続を行わないと遺産が受け取れない」ということはありません。法律上の規定に従い自動的に取得できます。しかし、相続に関していくつか済ませておかないといけない手続、検討すべき手続があります。それぞれに期限もありますので要注意です。


【相続開始直後にすべきこと】

相続開始後、つまり配偶者や親などのご家族の方が亡くなった後は、「死亡届の提出」をしないといけません。これは「亡くなった日から7日以内」です。亡くなってから数日経ってその事実を知ったのであればその日から7日以内でもかまいません。いずれにしても市町村など役所の窓口で死亡届の提出を行います。

その後は①遺言書、②遺産、③相続人の3点についての調査を進めます。これらの調査は法的な義務ではありませんし、期限もありません。ただし遺産分割や相続放棄などの手続を進めるために必要ですので早いうちに済ませておくことが大事です。


《調査すべき事項》


・遺言書:

遺言書が作成されているかどうか、作成されているときはその内容をチェック。ただし封のされている遺言書を自宅等で見つけたときは、開封するまえに家庭裁判所で検認の手続を行わなければならない。


・遺産:

亡くなった方が持っていた不動産、現金や預貯金、自動車、貴金属、株式などあらゆる財産の内容を調べていく。借金などの債務についても相続対象となるため、リスクの大きさを把握する意味でも必ず調べる。存在が確認できた財産については評価額も査定しておく。


・相続人:

相続の当事者である相続人を、亡くなった方の戸籍謄本から調べる。前配偶者との間に生まれた子ども、隠し子などの存在にも留意して調査を進める。


【遺産相続の検討】

遺産を調査したところ目ぼしい資産がない、それどころか大きな借金を残しており全体としての遺産総額がマイナスになる、といったケースでは遺産相続にリスクが伴います。

そこで相続人個人の財産を守るためにも「相続しないこと」の検討が大切です。

相続しない場合は「相続放棄の申述」の手続を家庭裁判所にて行います。申述が認められると相続人ではなくなり、リスクを免れることができます。

また、財産の種類・数が膨大で相続すべきかどうかの判断が難しいという場合には「限定承認の申述」の手続を家庭裁判所で行います。これにより、取得した遺産の範囲に限って債務の弁済責任を負うこととなります。

例として、1,000万円の資産と1,500万円の負債が含まれる遺産を取得したとしましょう。全体としてはマイナス500万円ですので相続放棄を検討することになりますが、その時点で具体的な金額が把握できないケースもあります。そんなとき、限定承認をしておけば1,000万円分の弁済だけで責任を果たしたことになります。500万円について自己の財産から支払う必要はありません。

しかし、ここで注意しないといけないのが期限です。

相続放棄の申述・限定承認の申述は、「相続開始から3ヶ月以内」に行わなければなりません。この期間を過ぎてしまうと遺産相続をそのまま受け入れたものとしてみなされてしまいます。


【遺産分割協議

遺産相続を受け入れる場合は、遺産分割協議を行います。

※相続人がご自身1人である場合や遺言書で全財産についての分割方法が指定されている場合には不要。

逆に共同相続する相続人がいるときは、その全員で分割方法等を決める必要があります。不動産相続をする場合は、この協議にて不動産を取得したい旨を伝えましょう。相続人全員の意見が一致すれば協議を終わらせることができます。

なお、不動産は1人だけで取得する必要はありません。1人でそのまま取得する方法を「現物分割」と呼び、他にも「共有」や「換価分割」「代償分割」などの不動産相続の方法があります。


・現物分割:不動産をそのまま取得。遺産分割のバランスを取るのが難しい。

・共有 :1つの不動産を複数人で所有する。その後の管理や処分が難しい。

・換価分割:不動産を売却して代金を分割する。売却までに時間と費用がかかる。

・代償分割:不動産を取得した方がその他の相続人に現金を支払って、バランスを取る。


それぞれに利点・難点がありますので、不動産の種類や他の遺産の内容なども考慮しつつ分割方法を検討しましょう。トラブルになりそうなときは弁護士に相談して対応してもらうと良いです。


不動産相続後の手続と期限


遺産分割協議で不動産の取得が決まっても、相続手続がすべて終わるわけではありません。必要に応じて相続税の申告、そして相続登記の手続も進めていきます。


【相続税の申告】

取得した財産の価額に応じて相続税が課税されることがあります。そこで相続税の計算を行い、ご自身に「相続税納付の義務があるのか」、納税が必要な場合は「いくら納付しないといけないのか」を調べましょう。

実際のところ、大半の方は納税や申告の必要がありません。

これは遺産に係る基礎控除額が最低でも3,000万円以上と高額に設定されているためです。遺産等の総額が基礎控除額以下であれば課税価格が0円となり、納税や申告が不要になるのです。

一方で、相続税の申告が必要になる場合は「相続開始から10ヶ月以内」という期限に注意しなければなりません。


【相続登記】

取得した遺産すべてに名義変更の手続が求められるわけではありません。しかし不動産相続においては、通常、所有権移転登記の手続により名義変更を行うこととなります。このときの手続は「相続登記」とも呼ばれます。

2023年時点で相続登記は法的な義務とはされていませんが、登記は所有者であることを示すなど、権利を主張する上で重要な仕組みです。手続を忘れていると所有権をめぐる争いで不動産を取られてしまう危険が高まってしまいます。

また、2024年4月1日以降については相続登記が法的な義務となります。法改正により義務化されるのです。登記申請の期限は「不動産を取得したから3年以内」と比較的長い期間が猶予されますが、その間にトラブルが起こらないとも限りませんので、手続に対応する時間ができればすぐにでも申請を行いましょう。

登記については司法書士に依頼することもできますので、プロに任せて効率的に相続関連の手続を進めていくと良いでしょう。


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