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2022.03.11
遺言書があるときの相続手続きの流れ!納得がいかないときの手続きとは

相続の開始後、通常は亡くなった方の配偶者や子、親など相続人となる人たちで話し合って相続の手続きを進めていくことになります。しかし、その協議の前には「遺言書がないかどうかを確認」しなければなりません。

この場合、取るべき手続き内容が変わってくるからです。

以下では、遺言書が発見された場合において、どのような流れで相続手続きが進行していくのかを解説していきます。また、その遺言書の内容に納得がいかないときにはどうすれば良いのか、といったことにも言及します。


遺言書の存在が確認されたときの手続き


相続財産は身内の財産であり、本来はその身内の話し合いなどで解決していくものです。しかし遺言書がある場合にはトラブルを避ける目的などから、所定の公的手続きを行わなければなりません。勝手に遺言書の内容を執行してはいけないのです。


【封印のある遺言書は家庭裁判所で開封】

遺言書は多くの場合封印されています。

そして封印のある遺言書に関しては、家庭裁判所にて相続人等が立会い、その上で開封するというルールになっています。そのため見つけた人が勝手に開封してはいけません。遺言書の内容が書き換えられる危険を防ぐためのルールであり、このルールに背いて開封した場合、過料に処される可能性があります。

また、他の相続人から疑いをかけられるリスクも負ってしまいます。誤って開けてしまったとしても、「もしかして、中身の書き換えをしたのではないか」「捏造されていないだろうか」と不安視される可能性は十分にあります。特定の相続人に不利な内容、特定の相続人に有利な内容になっていた場合には、その疑いがより強くなるでしょう。

なお、開封したからといって常にその遺言書が無効になるわけではありません。

しかしながら、故意で遺言書を棄損したり破棄したりした場合、相続人の資格が剥奪されてしまいますので注意しましょう。


【家庭裁判所に提出して検認を行う】

遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種があるのですが、このうち公正証書遺言以外に関しては、家庭裁判所で「検認」の手続きを請求しなければなりません(公正証書遺言に関しては公証人の面前で作成されているため不要)。

検認は、「相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせる」こと、「遺言書の加除訂正の状態や日付、署名など、検認時点における遺言書の状態を明確化し、偽造変造を防止」することを目的とした手続きです。遺言の有効無効を判断するわけではありません。

検認を要するのは封印されている遺言書を開封してしまった場合でも同じです。そのままの状態で家裁に持っていき、検認を行います。

基本的な流れとしては、まず家裁に提出し、その後家裁から検認の連絡を受けます。そして検認のために立ち会う期日の指定を受け、当日現場に向かいます。

その他手続きに関する情報は下表の通りです。


①検認の申立権者

・遺言書の保管者

・遺言書を発見した相続人

②申立先

・遺言者最後の住所地を管轄する家庭裁判所

③申立費用

・遺言書1通につき、申立手数料収入印紙800円

・相続人1人あたり、予納郵便切手82円を相続人(申立人も1人にカウントする)

④基本的な添付書類

・遺言者の出生から死亡まで、すべての戸籍謄本

・遺言者の住民票の除票(または戸籍の附票)

・相続人全員の戸籍謄本


遺言書の内容に従って遺産分割を行う


検認までが相続手続きの下準備と言えます。

ここからは、遺言書の内容に沿った遺産分割を進めていきます。

なお、検認を終えた遺言の執行をするには、遺言書に「検認済証明書」が付いていなければなりません。そこで、検認済証明書の申請を行う必要があります。


【指定があれば遺言執行者が手続きを行う】

遺言に「遺言執行者の指定」がされていることもあります。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために「相続財産の管理やその他執行に必要な一切の行為」をする者です。民法上もその目的を果たすための権利義務を有する旨規定されています。

そして、遺言執行者が指定されている場合、遺贈履行の権利は遺言執行者のみに認められます。

その反面、遺言執行者はその立場につくことを承諾したのなら、直ちに任務に取りかからなければなりません。そして任務に取りかかったのなら、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知する法的義務も負います。

一方、相続人としても遺言執行者の指定がされているとその履行が制限されるため、就任の可否を早く把握したいところです。そこで指定された者に対して、就任するかどうかを確答すべき旨催告ができると法定されています。それにもかかわらず返答をしなかったときには、承諾したものとみなされます。

相続税の申告など、期限が設定されている手続きもありますので、なかなか遺言執行者が定まらない場合には法律に基づいた催告を行いましょう。より実効性を高めるためにも、弁護士への相談・依頼がおすすめです。


【遺言執行者がいないときは家裁に選任の申立てができる】

遺言執行者の指定がないとき、または前項の催告の結果就任しない旨の返答をされたときなどには、家裁に対して遺言執行者を選任するよう申立てることができます。

この申立てができるのは「利害関係人」です。

つまり相続人には限られず、その他遺贈を受けた者や、さらには遺言者の債権者もここに含められています。


【指定のない財産については相続人間で協議】

遺言書ですべての財産につき指定がなされているとは限りません。

そこで、記載のない財産に関しては、相続人全員で協議をして分配方法を決めていくことになります。

協議をしなければ、法定相続分に応じて分配されます。


遺言の内容に納得できないときの手続き


最後に、遺言の内容に納得いかないときの対応、具体的な手続きについて解説します。

【相続人全員の同意で遺産分割する】

遺言が残されていたとしても、相続人全員の同意により、その内容と異なる形で遺産分割することが可能です。

ただし、「相続人全員の意見の一致」が欠かせません。全員の実印を押印し、遺産分割協議書を作成しましょう。

この場合、受遺者が遺贈を事実上放棄し、その上で共同相続人間の遺産分割が実施されたものとなります。


【遺留分侵害額の請求をする】

一定の相続人には、被相続人の財産から取得できる最低限の取り分が法律上保障されていいます。これを「遺留分」と呼びます。

特に一家の経済的支柱であった人物が亡くなった場合、家族が一切の財産を得られないとなれば生活ができなくなってしまいます。こうした事態を防ぐために設けられた制度です。

被相続人がした生前贈与や遺贈によってもこの権利は奪われませんので、遺留分の侵害を受けた分に関しては、遺言の内容に背いてでも財産を得た者に対して請求が可能です(遺留分侵害額の請求)。

ただしすべての相続人に認められている権利ではありません。同制度の趣旨からして、被相続人の配偶者や子、親までは認められるのですが、兄弟姉妹にまでは認められません。

なお、遺留分侵害額の請求に関して当事者間で解決ができないという場合には家裁にて調停手続きを利用することも可能です。

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2022.02.08
親権と監護権の違いとは?親権と監護権の内容を詳しく解説

「親権」に関しては離婚問題の際、聞くことが多いかと思います。なんとなく、どのような権利なのかイメージできているかと思いますが、「監護権」との比較をする上ではなんとなくのイメージではなく、具体的に権利の内容を知っておくことが大切です。

そこでこの記事では、親権や監護権の意味、それぞれの違いについて解説していきます。


親権とは


「親権」とは、ただ単に親が子に対して行使し得る権利を指すものではありません。

民法第820条に規定されているように、「子の利益のため」に監護・教育をする権利を行使し、同時にその義務を負う法的地位であると考えられています。

第八百二十条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

引用:e-Gov法令検索

権利としての側面に着目する場合、身上監護権を包含する規定として、命名権や子の引渡し請求権、治療同意権の根拠規定になると解されています。ただ、別途根拠規定が設けられている「居所指定権」「懲戒権」「職業許可権」については包含されません。

親権者にこれだけ大きな権利が与えられているのは、それだけ子どもが社会的自立を果たすためには家族内のコミュニケーションや親密な養育関係が重視されているからです。学校等の教育も重要ですが、小さな子どもに対しては親の監護・教育機能の存在が相当に大きいのです。

よって、親権は、子どもが社会生活で自立できるようになるまでの監護および教育機能、そして社会化機能を担っているものと捉えられています。

しかしながら、現実には監護教育をする権利の濫用も生じており、虐待などが起こっているケースもあります。そこでこうした濫用等があったときには親権の喪失や停止といった処分も予定されています。


【親が離婚したときの親権】

民法では、未成年者に関して父母の親権に服するとの規定が置かれており、婚姻中は両親の共同によるとされています。

それでは、親が離婚をしているケースではどうなるのでしょうか。

この点、日本の法律では、一方のみが親権者になると規定されています。そのため、未成年者がいる状況で離婚をするには、離婚後の親権に関してどちらが有するのか決める必要があります。

離婚後も両親が共同で親権を行使し続けられないのです(なお、法務省が、離婚後も共同親権にするかどうかを選択できる制度の検討をしています)。


【親権に争いがある場合】

離婚時、どちらが親権を持つのか争いにならなければ特段問題になることはありません。

しかし、親権者の設定で話が決着しない場合には、いくつかの基準に照らし合わせながら決定されることになります。

主に以下の要素が考慮されます。

・母親による監護教育が特に重要な年齢かどうか

・子どもとの生活の継続性  子どもの意思

・兄弟姉妹の親権

母親のほうが親権を獲得しやすいと言われることも多いですが、ただそれだけで親権者になれるわけではありません。あくまで子どもの利益を考えた結果、母親との生活が必要と判断される場合に親権が渡るのです。乳幼児の場合にはその傾向が強くなりますが、母親が精神疾患を抱えているなど、その他の事情によっては十分覆る可能性があります。

子どもの意思に関しては、15歳以上かどうかが非常に重要です。15歳以上の場合には子どもの意見表面権が尊重されなければならず、子ども自身の判断が結果を左右することになるでしょう。15歳未満であっても、一般には10歳以上に達していれば意思が強く反映されます。

なお、親権の決定手続きは「親による協議」「調停」「裁判」の3段階があります。最終手段である裁判にまで到達すると、どちらかの希望通りにならなくても、強制的に一方が親権者となります。


監護権とは


ここまで親権に関して説明してきましたが、これと並んで「監護権」という言葉も耳にしたことがあるのではないでしょうか。

監護権は、親権と別物の権利ではありません。親権の具体的内容である「身上監護権」「財産管理権」のうち、身上監護権を指しています。監護の意味に関して厳格な定義がなされているわけではなく、身体上の監督保護に関する権利を広く指します。

むしろ監護権を理解する上では、“本来の親権から財産管理権を抜いた権利”であると捉えたほうがイメージはしやすいです。子どもと一緒に生活をする親が監護権者、他方の親が親権者となりますが、このときの親権は財産管理権しか含まれません。

どんな場合に監護権だけを別個に考えるのかというと、1つは親権者の設定に争いがあり、その妥協案としてそれぞれの権利を各々に分けるような状況です。親権本来の意義からすれば、子どもの利益にならないような行為はすべきではないのですが、過去には「健全な人格形成のために父母が十分に協力できるのなら、監護権を親権から分けることも適切な解決方法である」旨裁判所から示されています。

また、以下の場合でも監護者の指定が問題になり得ます。


・親権者が子どもの監護教育に関しては適していないと思われるケース

・監護者として問題ないが、財産管理ができないと思われるケース

・両親ともに監護教育が難しく、第三者を監護者に指定したいケース

 

親権と監護権の違い


最後に、親権と監護権の違いを整理しておきます。

まず、監護権は、親権の一部です。

親権には身上監護権(監護権)と財産管理権とがあり、監護権は子どもと一緒に生活をして日常生活の世話や教育などを行う権利などを指します。他方、財産管理権は財産に関して法律行為を子どもの代わりに行い、財産を管理していく権利を指します。

権利の性質上、上の2種類を親権の具体的内容としていますが、基本的にはこれを分離すべきではありません。むやみにこれを分けてしまうと子どもの利益を害するリスクが高まってしまうからです。

しかし、例外的に分離することもあり、その場合の親権は実質的に財産管理権です。監護権と違って、“親権であるにもかかわらず生活の世話等をする権利がない”という違いが出てきます。

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2022.02.03
親権の決め方とは?判断基準や手続きの流れを解説

両親が婚姻している場合には、子どもの親権について気にしないケースがほとんどです。しかし、離婚をするときにはどちらが子どもの親権を持つのか決めなければならず、親権に関するルールなどを知る必要があります。 そこでこの記事では親権について簡単に説明した上で、親権の決め方やその流れについて解説していきます。


親権について


そもそも親権とは、(未成年の)子どもに対する監護・養育、財産の管理をするとともに子どもの代理人となり法律行為を行う権利義務のことです。ただ単に育てさえすれば良いというものではありません。親権を持つ者には法律上一定の権利が認められますし、同時にそれ相応の責任も伴うのです。 大別して「財産管理権」と「身上監護権」から構成されています。 前者は子どもの財産につき包括的に管理ができるという権利です。子ども自身が持つ財産対しても親権を持つ者は権限を行使可能なのです。 後者は子どもの法律行為に対する同意や代理を行う権利のことです。他にも子どもの居所を指定する居所指定権や、しつけをする懲戒権なども含みます。 両親が婚姻している場合、共同でこの親権を持つことができるのですが、離婚後も共同で持つことは認められません。そこで、未成年の子どもがいる場合において離婚をするには、どちらが親権を持つのか決めないといけません。


まずは両親の協議で親権を決める


親権を決める流れとしては、まず、両親による協議から始まります。 両親が話し合いをし、合意が得られれば複雑な手続きも要することなく決せられ、問題は解決します。 「原則母親」「原則父親」といったルールはありませんし、話し合いにより自由に決めることが可能です。 離婚そのものに関しても合意が取れているのであれば、協議離婚として離婚届の中に親権者の記載をすれば良いです。逆に、未成年の子どもがいるにも関わらず、親権者記入欄に記載がない離婚届は受理をしてもらえません。 なお、状況に応じて親権の一部である監護権(身上監護権)だけを一方に付与することもできます。基本的には監護権を分離することなく親権者と監護権者が一致している方が望ましいのですが、例外的にこれを分けるケースもあるのです。 例えば財産管理権は父親に合った方がふさわしいものの、仕事で外出している時間が長く十分な監護ができないといった場合には分ける可能性があります。

【協議で決まれば公正証書を作成】

協議で決めることができたのなら、大きなトラブルも発生しておらず、比較的穏便に話が進んでいることが想定されます。 しかしながら、協議で決めた内容につき、後から不満が出てくることもあり得ます。 そこで、蒸し返しが起こらないよう、話し合いの内容は公正証書として残すようにしましょう。親権のことのみならず、離婚に関する協議内容をまとめて「離婚公正証書」を作成すべきです。 公正証書は原本が公証役場で保管されるため紛失のおそれがありませんし、他方が書面を保管することによる改ざん・変造のリスクも避けられます。 さらに、記載内容について公証人がチェックをしてくれるため、協議内容につき法令違反で無効になってしまう事態も避けやすいです。 公正証書の利点はこれらのほか「執行力」にもあります。 相手方が義務を履行してくれないということも起こり得るのですが、公正証書の効力として執行力が認められていますので、こうした問題を早期解決することができます。 要は、公正証書が作成されていることで「強制執行」が可能となるのです。単に書面として残しただけだと、その書面を証拠として用いることはできますが、強制執行にあたって訴訟提起、審理、そして勝訴の判決を受けなければなりません。非常に手間ですし、執行までに時間がかかってしまいます。 そこで執行力が重要になってくるのです。ただし、強制執行を認める旨記載しなければなりませんので注意が必要です。作成にあたっては法律のプロである弁護士に相談・依頼するとスムーズです。 なお必要書類は「本人確認書類」や「戸籍謄本」「印鑑証明書」などです。財産分与も併せて行う場合には通帳や不動産の登記など、別途必要になる資料が出てきます。何が必要なのか、こちらも弁護士からアドバイスを受けましょう。


協議で決まらなければ調停で親権を決める


ここまでは夫婦の協議で親権を決められる場合の話です。 これに対し、夫婦間だけで親権者を決められないケースもあります。この場合には以下で説明するように家庭裁判所を介した手続に頼ることになります。 まず行うのは「調停」です。親権者の指定を求めて家庭裁判所に調停を申し立てますが、親権争いは離婚の成立可否に関わってきますので、通常は親権の指定のみならず離婚調停の申し立てを行います。 調停でも当事者である夫婦の話し合いが軸になる点に変わりはありませんが、調停委員が間に立つことになり、より公正性を保持しやすくなります。法的な観点を交えることで、一方が不当に意見を主張し続けるような状況も避けられます。 ただ、調停でも最終的には合意が求められます。一方が同意をしなければ調停で決することはできないのです。


調停でも決まらなければ裁判で親権を決める


調停でも決められない場合、裁判で親権を決めることになります。 当事者の意見も斟酌されますが、最終的には裁判官が親権者を決めるのです。そのため一方が無理やり意見を通そうとしても、その内容が法的に無理のある内容だと実現はしません。

【裁判で親権を得るポイント】

裁判で親権を得るためには、法律上・制度上、自らの方が親権者としてふさわしい人物であると評価してもらわなければなりません。 ここで一番のポイントとなるのは「子どもの利益」です。 子どもに対する愛情も重要な基準ですが、気持ちの強さで決まるわけではなく、子どもにとって幸せなるのはどちらか、というところが見られます。具体的には、父母の健康状態や精神状態、経済力が評価対象となりますし、居住環境および教育環境等も考慮されます。 また、子ども自身の意思や年齢などもポイントになってきます。子どもが年齢を重ねているほどその子自身の意思は反映されやすいです。 また、これまで現実に監護を継続してきたという事実も親権を得るためには重要です。 これまでどちらが育ててきたのか、その間虐待などの問題はなかったか、という点も見られます。 他にも様々な事情が判断基準となります。以下でいくつか例を挙げます。  父母の健康状態、精神状態、経済力  居所環境  教育環境  子どもの意思  子どもに対する愛情  これまでの監護継続性  代わりに面倒を見ることができる人物の有無  兄弟姉妹の存在


親権の変更も可能


ここで挙げたいずれの方法で親権者を決めたとしても、その後いっさいの変更が認められないわけではありません。 経済状況や監護能力の低下が起こることもありますし、状況に応じて親権者変更の調停や審判を家庭裁判所に申し立てることができます。前の決定を覆すだけの特段の事情が必要になり、高いハードルとなりますが、変更が不可能ではないことは知っておくと良いでしょう。

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2021.11.30
遺言書には様々な作成方法があります!遺言書の種類別に特徴を解説

相続トラブルの防止、自己の財産を最後までコントロールする手段として遺言書は有効です。ただ、法的に有効な方法作成をしなければ思い通りに財産を引き継がせられない可能性があります。

そして遺言書は作成方法によっていくつかに分類されますので、その種類を把握し、それぞれにつき特徴や有効に機能するための条件等を知っておくことが大切です。当記事では遺言書の種類を紹介していきますので、遺言書の作成を考えている方はぜひ参考にしてください。


普通方式遺言と特別方式遺言


まず、大別して「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2パターンに分けられます。

名称からイメージされる通り、普通方式遺言のほうが一般的に用いられる方式で、以下の3種類があります。

・自筆証書遺言

・公正証書遺言

・秘密証書遺言

 他方、特別方式遺言は特別な状況において認められる遺言書の方式で、大きく以下の2つに分けられます。

・危急時遺言

・隔絶地遺言

緊急事態向けの作成方法であり、この方式によって適切に遺言を残しても、その後遺言者が上の普通方式遺言を作成できるようになって6ヶ月間生存したときには、特別方式で作成した遺言書は無効となります。


【緊急時などに活用できる方式】

特別方式遺言の各類型はいずれもメジャーな作成方法ではありませんし、活用の機会がやってくることもめったにありません。そのため、こちらに関してはざっとまとめて紹介しいきます。

まずは危急時遺言についてですが、こちらは病気・怪我、遭難などといった事情によって死期が迫っている状況でのみ利用できる方式です。

病気などが原因で、自分で書くことができない状況も考えられますので、必ずしも自分で書き記す必要はありません。立ち合ってもらう証人に代筆してもらうことも可能です。記載した内容は本人および他の証人にも伝えられ、間違いがなければ証人らが署名押印して完成となります。なお、証人3人以上に立ち会ってもらう必要があります。

こちらは危急時遺言のうち「一般危急時遺言」と呼ばれるもので、これとは別の「難船危急時遺言」と呼ばれるものもあります。難船危急時遺言は飛行機や船に乗っている時の危難が想定されており、より緊急であることから一般危急時遺言よりも要件が緩和され、証人の数も2人で足ります。

続いて隔絶地遺言についてですが、こちらは社会と隔絶されていたり、海上にいるなど物理的に陸地から隔絶されていたりするケースで利用できる方式です。

例えば伝染病などに罹患し、隔離されている場合には、警察官1人と証人1人の立ち合いにより遺言書の作成を行うことができます。立会人全員の署名押印も必要であるなど、危急時遺言と似ている点も多くありますが、代筆ではなく本人が書き記すことが必要とされている点で異なっています。なお、隔絶されている原因は伝染病以外でもかまいません。何らかの理由で社会との交通ができない場合にはこの方式が活用し得ます。そのため「伝染病隔絶地遺言」と呼ばれたり、「一般隔絶地遺言」と呼ばれたりもします。

一方で、隔絶地遺言には「船舶隔絶地遺言」と呼ばれるものもあります。こちらは航海をしていることから陸地を離れており、通常の遺言書が作成できない状況で利用できる遺言方式です。作成にあたって警察官を呼ぶことが困難であるため、船長や事務員2人以上が証人として立ち会うことになります。やはり代筆などは不可とされ、本人による作成、署名押印などが必要である点も共通しています。


自筆証書遺言


ここからは普通方式遺言3種を紹介していきます。

まずは最もメジャーな方式である「自筆証書遺言」です。本人が自筆、作成するタイプで、作成にあたって本人以外が必要ありません。1人で作成でき、コストがかからないこと、誰にも知られることなく作成できるというメリットがあります。その反面、本人が遺言全文、日付、氏名を自書押印しなければならず、書式不備や紛失、偽造・変造などのリスクがあり、検認手続きも必要になります。

ただ、自筆証書遺言の場合には2020年から新たに「自筆証書遺言書保管制度」の運用が開始されており、紛失等への対応がしやすくなっています。

同制度は、自分で遺言書を作成後、法務局に保管をしてもらうというものです。中身の書き換えや紛失のほか、発見されないという事態を避けられます。さらに、中身の確認もしてくれるため遺言の有効性に不安があるという方にはおすすめできます。


公正証書遺言


「公正証書遺言」の場合、公証人に作成をしてもらいます。そこで、作成にあたっては遺言者本人に加え証人2人以上と公証人が必要になります。

手順としては、まず、本人が公証人に内容を口述し、公証人がその内容を筆記。そして読み聞かせます。その後本人と証人が承認し、署名押印。公証人も証明押印します。

公正証書遺言のメリットとしては、公証人が保管することによる紛失や偽造・変造のリスクが小さいこと、遺言の内容自体も明確となり証拠能力が高くなること、そして検認手続きが不要になることが挙げられます。他方、費用や手間がかかるというデメリットがあります。また、遺言の内容を秘密にはできないため、あまり内容を知られたくないという方には向いていません。


秘密証書遺言


「秘密証書遺言」は自筆証書遺言同様、本人が作成する遺言ですが、作成にあたっては公正証書遺言同様、2人以上の証人と公証人が必要です。ただ、記載内容、例えば誰にどれだけの財産を分けるのか、といったことに関与するわけではありません。遺言書の存在証明のために立ち合いをするのであり、その範囲でのみ関与をするのです。

作成手順としては、まず、本人が自分で作成した遺言書に署名押印します(他人が書いたものでも可)。そして本人がその証書を封じ、証書と同じ印鑑を用いて押印をします。その後公証人と証人に封書を提出し、申述。公証人が封筒に日付と申述事項を記載。最後に全員が署名押印して完成です。

ここからわかるように、内容に関しては確認が行われません。その意味で「秘密」が保たれるのです。そこでメリットとしては遺言の存在は明確にしつつも内容の秘密を保てるということ、また、自筆証書遺言とは違い他人が書いてもかまいませんし、ワープロを用いてかまわないということも挙げられます。

他方、検認手続きはやはり必要ですし、費用や手間はかかってしまいます。内容そのものの公証はされていないことから、相続開始後紛争が起きる可能性も否めないというデメリットも持ちます。

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2021.10.30
家や土地などの不動産相続手続きの流れ

不動産の相続登記を行う流れ


一般的に不動産の相続登記は以下の手順で行われます。


【①土地の分配方法を決める】

 遺言通りに遺産を分割する場合を除き、相続が発生した際、自宅や土地などの不動産の財産を、誰が、どの程度相続するのかを決める遺産分割協議が行われます。現金や預貯金などと異なり、不動産はすぐに現金化できず、また複数の相続人で分割しにくいため、相続人全員が納得のいく方法で財産を分割するのはなかなか困難です。

 不動産の分配方法としては、「現物分割」、「換価分割」、「代償分割」の3通りの方法があります。


●現物分割

特徴:A不動産を長男に、B不動産を次男に、というように、相続財産の形を変えずに各相続人にそのまま分割する

メリット:・分割の際に手間が明からない・財産をそのまま残すことができる

デメリット:・財産額に差があると、相続分通りに遺産分割できず、不公平となる


●換価分割

特徴:遺産の一部または全部を、競売や任意売却などによって金銭に換えてから分割する

メリット:・公平な分割が可能となる・不動産など、現物では分割しにくい財産も分割可能

デメリット:・財産の現物が残らない・売却の手間や費用が掛かる・売却益に、所得税や住民税がかかる


●代償分割

特徴:特定の相続人が自分の相続分を超える遺産の現物を取得し、取得した相続人が他の相続人に金銭(代償金)等を支払う

メリット:・公平な分割が可能・農地や事業資産などを細分化せずに済む

デメリット:・代償金を支払う能力がなければ利用できない・代償金が支払われない可能性がある


いずれの分割方法にも一長一短があるため、ケースに応じて適当な方法で分割するようにしましょう。

なお、その他の分割方法として「共有」があり、これは1つの財産を複数の相続人で持ち合う方法です。公平な分割が可能なため、一見、良い分割方法と思われがちですが、相続不動産を共同で管理しなければならず、何らかの理由で相続人間の仲が悪くなった場合や誰かが経済的困窮に陥った場合、うまく共同管理し続けるのが困難となります。また売却などの処分を行う際にも共同相続人全員の同意が必要になり、意見に相違がある場合は容易に処分することができません。共有状態のままさらに相続が起きると、権利関係が複雑になるリスクもあります。共有は問題の先送りであり、基本的に好ましい状態ではなく、将来的に上記で紹介した方法で遺産を分割する必要があります。

遺産分割協議の結果は遺産分割協議書にまとめ、相続登記の際に提出します。


【②相続登記に必要な書類を準備】

 遺産の分割方法が決まれば、各相続人が取得した財産の名義変更を行います。相続登記(相続をきっかけとする不動産の名義変更)を行う際は、以下の書類が必要となります。


・登記申請書

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本など

・被相続人の住民票(除票)

・相続人全員分の戸籍謄本、住民票写し、印鑑証明書

・遺言書又は遺産分割協議書

・固定資産評価証明書

・登録免許税


 登録免許税は、登記の際に必要となる税金で、相続登記の場合は「固定資産税評価額(1,000未満切り捨て)×0.4%」(遺贈の場合は2%)が課税額となります(100円未満切り捨て)。なお、登録免許税は現金納付が原則ですが(登録免許税法21条)、実際は収入印紙を登記申請書に張り付けて申請するケースがほとんどです。


【③書類を法務局へ提出】

上記の書類に必要事項を記載の上、不動産の所在地を管轄する法務局(または地方法務局、支局、出張所)へ提出し、登記申請を行います。相続登記の申請時期については制限がありませんがなるべく早い段階で手続きを行うことをおすすめします。詳しくは後述しますが、相続登記をしないと、不動産の売却や担保設定ができず、また所有権等をめぐるトラブルに巻き込まれるリスクなどがあります。

なお、2021年4月21日に参議院本会議で土地の相続登記申請義務化を内容とする法案が成立しており、2024年度を目途に施行される予定です(参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」)。この本案では、不動産を取得した相続人が、その取得を知った日から3年以内に登記申請を行わないと、正当な理由がある場合を除き、10万円以下の過料の対象となるとしています。このため、相続登記は迅速に行うことが重要です。

登記の申請をすると、登記所では申請の受付、申請書の調査、登記記録への記録(記入)、校合の順で処理され、登記完了予定日までに登記が完了します。その間に申請書等に不備がある場合は、申請者またはその代理人に連絡して申請の補正を促します。補正に応じない場合や補正ができない内容のものであれば、申請は却下ないし取り下げを促されます。

登記が完了すると、登記識別情報通知書(通知を希望しない場合等を除く)、登記完了書が通知されます。また希望した添付書類も還付されます。


相続登記をしなかった場合のデメリット


遺産分割後はなるべく早い段階で相続登記を行うようにしましょう。相続登記をしなかった場合のデメリットとしては、以下のものがあります。

なお、前述の通り、所有者不明土地の解消を背景とする土地の相続登記申請義務化に関する法案が成立しており、民法等一部改正法成立後は所定の期間内に相続登記を行わなければ過料の罰則があります。相続登記をしないリスクが増加するということであり、相続登記を行う重要性が増しているといえるでしょう。


【不動産を売却・担保設定できない】

不動産を売却したり抵当権等の担保を設定したりする際は、その不動産の所有者であることを示すため、登記を行う必要があります。

売却や担保設定の際に登記をしていないと第三者に対抗できないため(民法177条参照)、一般的に売却等の際は所有権移転登記手続きなども同時に申請することになります。しかし、そもそも不動産の名義が被相続人のままだと買主名義に変更できないため、まず売主名義に相続登記をしなくてはなりません。また売買等の際に売主と所有者が一致していないと買い手が見つかりにくいなどのデメリットもあります。

不動産をアパートとして貸し出している場合だと、借家人から賃料を受け取れない可能性があります。民法605条の2第3項は次のように規定しています。

第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

この条文は2020年4月1日に施行された改正民法に新たに設けられたものですが、最判昭和49年3月19日民集28巻2号325頁を踏まえた規定です。この規定によると、賃貸不動産を相続した相続人が借家人に対して賃料を請求した際に、相続登記をしていないと借家人は賃料の支払いを拒むことができます。この点も相続登記をしないデメリットの一つといえるでしょう。

現時点で売却や担保設定の予定がない場合でも将来的に必要となる可能性があります。後述の通り、時間が経過するほど、相続登記に必要となる書類を入手しにくくなるため、不動産の売却等が必要となった時に書類が集まらず、売却できなかった、ということにならないよう早い段階で相続登記しましょう。


【相続が起きるたびに権利関係が複雑になる】

相続登記をしていないと、その不動産は相続人全員が法定相続分に応じて共有している状態です。この状態のまま、相続人の一人が亡くなると、その故人の相続人がその共有分を相続することになり(いわゆる「数次相続」)、その不動産の相続人が増えることになります。数次相続が繰り返し起きると、相続人が増え続け、権利関係が複雑化します。遺産分割協議を通じて相続登記を行う際は、協議を行うこと自体が困難となり、また協議の成立には相続人全員の同意及び印鑑証明書が必要で、協議をまとめるのも一苦労することになるでしょう。


【不動産の所有権をめぐるトラブルに巻き込まれる恐れがある】

不動産における所有権等の権利を主張する第三者が現れた場合、両者の優劣は不動産登記の先後によって決着をつけます(民法177条)。そして相続において、不動産につき遺言や遺産分割などで法定相続分を超える権利を取得した場合、相続登記をしていないと、その法定相続分を超える部分につき第三者に対抗することはできません(民法899条の2第1項)。

例えば、AとBが相続人で、Aが不動産を全部取得することに決まったとしましょう。しかしBは借金をしており、Bの債権者(金銭を貸した側)が債権を保全するため、Bの代わりに登記(代位登記)をして差し押さえたとします。この場合、相続登記をしていないとAは自己の法定相続分を超える部分につき、その債権者に対抗することができません。

このように早急に相続登記手続きをしないと、不動産の所有権を失うリスクがあります。


【時間が経過するほど、手続きに必要となる書類を入手しにくくなる】

相続登記を行うには、被相続人の戸籍謄本等や住民票(除票)などが必要になります。亡くなった方の戸籍謄本や住民票には保存期間があり、この期間を超えてしまうと入手できなくなります。

戸籍謄本の保存期間は現在だと150年間ですが、平成22(2010)年6月1日以前のものは80年や100年であり、すでに取得できない場合があります。住民票(除票)の場合、住民基本台帳法の改正(令和元(2019)年6月20日施行)により、5年から150年間に延長されましたが、すでに保存期間を経過しているもの(平成26(2014)年3月31日以前に消除または改製したもの)については発行することはできません。

必要書類を入手できないとなると、別個の書類を入手したり、法務局と相談したりして手続きを行うことになりますが、相続登記に不慣れな一般人ではかなり手間と労力を要するでしょう。

相続登記をしないことで上記のようなデメリットがあります。なるべく早い段階で手続きを行うことをおすすめします。

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2021.09.30
遺産相続問題を弁護士に相談するメリットとは?費用の相場も紹介

遺産相続でよくある問題


遺産相続では財産に大きな動きが生じます。そして多数の利害関係者が登場することになり、トラブルも起こりやすくなります。親族間の人間関係が良好でなかったケースではもちろん、良好な関係を築いてきた場合でも揉めてしまうことはよくあります。「希望していた財産を得られなかった」「不当に財産の分割が行われた」といった理由で、その後の関係が破綻してしまうおそれもあります。


また、親族間での関係が悪化しなくても、残った財産が主に借金であった場合などには弁済の義務ごと承継してしまうというリスクが生じます。相続の仕組みや手続に関してきちんと理解し、適切な対応をしていけばこうしたリスクは避けられるのですが、多くの方は法的な手続に詳しくありません。その結果、大きな借金を受け継ぐことになってしまい、破産にまで追い込まれる可能性も出てくるのです。


その他にも、相続では多様なトラブル・悩み事が生じ得ます。相続の開始は予期が難しいですし、事前に弁護士への依頼という選択肢を視野に入れていなければ対応に遅れて取り返しがつかない事態に陥ることがあるのです。


相続人が弁護士に依頼するメリット


弁護士に依頼することで、上のような種々の問題を予防・解決できるというメリットが得られます。以下では相続人の立場から、そのメリットに関してより詳しく解説していきます。



借金等の相続によるリスクを抑えられる

弁護士に依頼するメリットの1つとして、「借金等を承継してしまうリスクの低減」が挙げられます。


「単純承認」「限定承認」「相続放棄」に関するアドバイスが得られることがその理由です。相続が開始されたことを知ってから何ら手続をしなければ、単純承認をしたものとみなされ、あらゆる財産がそのまま承継されることになります。マイナスの財産である借金なども引き継ぐことになり、相続人には弁済の義務が負わされるのです。


これを防ぐには、別途限定承認をするか、相続の放棄という手段を採らなくてはなりません。弁護士に各手続の効果ややり方、注意点を聞くことで、このリスクは避けることができるでしょう。


 

財産・相続人の調査や手続を任せられる

遺産を誰にどれほど分配するのか、法律で最低限のルールは定められていますが、相続人間で行う協議により具体的な財産の分配ができます。


しかし、そのためには相続人および財産の調査が欠かせません。協議前にきちんと調べていなければ、時間をかけて行った協議も無駄になる可能性があります。


ただ、この作業はとても労力のかかることです。何も知識を持たない者がゼロから必要な手続を調べていたのでは非常に時間もかかってしまいます。そこで、各種調査から財産目録の作成、相続に必要な手続については弁護士に代わりにやってもらうのがベストです。手間がかからなくなる上、ミスを防げます。


また、遺留分の侵害があった場合の対処も任せられます。例えば、遺言書の指定によって受け取れる財産が非常に少なくなったケースなどです。計算も手続きも複雑ですが、弁護士に任せておけば安心して最低限の財産が確保できます。


 

遺産分割協議をスムーズに進められる

調査が順調に進められたとしても、遺産分割協議という大きなハードルが残っています。


相続人全員が参加し、分割の方法について話し合いを行うのです。これまでの力関係を背景に理不尽な主張をされることもありますし、お金に関する話し合いにより精神的なストレスがかかることもあります。


弁護士に頼むことでこの協議をスムーズに進めることが可能になり、不当な主張を退け、直接あまり触れたくないお金の交渉をする必要もなくなります。


また、分割の方法に悩んでいた財産についても効果的な解決策を見出しやすいです。信頼できる売却先の紹介をしてもらえるかもしれませんし、不動産の扱いやその後の登記に関することまで任せられます。


また、協議が調ったときの遺産分割協議書も適切に作成してもらうことで、後から法的に無効であったなどと蒸し返されるリスクも抑えられます。


 

交渉から訴訟まで広くトラブル対応してもらえる

専門家にも、司法書士から行政書士、税理士など様々なプロがいます。その中でも弁護士への依頼がおすすめされる理由は「あらゆる法的トラブルに対応ができる」ことにあります。


例えば司法書士は登記の代行が専門で、その手続に関する範囲内でしか対応ができません。トラブルが生じたとしてもその相手方と交渉を図ることまではできません。行政書士や税理士についても、トラブルが生じたときには対応しきれず、結局弁護士に依頼せざるを得なくなります。


広範な法律相談ができるのも弁護士に限られていますし、交渉の段階から訴訟まで、広く対処してもらうには弁護士を利用することになります。



被相続人になる者が弁護士に依頼するメリット


弁護士のサポートが得られるのは相続人だけではありません。被相続人となる者が、生前に相談しておくことでも様々なメリットが得られます。



遺言書が無効になるのを防げる

1つは「遺言書を適切に作成できる」点にあります。


遺言書に強制力を持たせるには、形式的な要件をクリアしていなければなりません。一定のルールに従わず作成した遺言書の内容も、本人の意思表示として事実上の効力は期待できますが、トラブルの原因にもなり得ます。「本人以外が作成したものではないのか」などと争われると、せっかく作った遺言書も効力を発揮せず、内容通りに遺産を分けることはできなくなります。


他方、弁護士に相談しておけば適切な遺言書が作成できます。遺言書の隠匿や改ざんの防止といった効果も期待できます。


 

相続人間のトラブルを予防しやすい

遺言書の作成が代表例ですが、被相続人となる者が事前に策を打っておくことで後の相続人間のトラブルを防ぐことができます。


弁護士からアドバイスを受けることで計画的に相続対策ができ、自身の死後も、残った親族が良好な関係を維持できるでしょう。



遺産相続における弁護士への依頼費用相場


最後に、遺産相続に関する弁護士への依頼費用について、相場を見ていきましょう。


なお、あくまで目安であることに留意し、具体的な金額や料金体系は依頼先によって異なるということは覚えておきましょう。


基本的には「相談料」「着手金」「報酬金」「日当」「手数料」に分けられます。


相談料は30分5,000円、初回無料などとしていることが多いです。


着手金と報酬金については依頼主が得る財産の価額に応じて変動するケースが多いです。300万円以下であれば「着手金8%・報酬金16%」、3,000万円以下なら「着手金5%+10万円前後の一定額・報酬金10%+20万円前後の一定額」といったイメージです。


日当は出張を要した場合の交通費や宿泊費。


手数料は書類の作成や調査に要した費用が該当します。例えば郵送にかかった費用や戸籍謄本の取得費用などは手数料とされることが多いです。


依頼にあたっては、どの費用がどこに含まれるのか、追加で発生する可能性のある料金は何か、といったことを確認し、明確にしておくことが大事です。





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